執筆『身寄りのない遠縁の伯母の一軒家をどうしたらよいのか・・・』

自由民主党月刊女性誌「りぶる10月号」

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司法試験問題漏洩事件について思うこと

まさに青天の霹靂とはこのことだ。我々法曹関係者にとっては、どんな事件よりも重く、憂鬱である。司法試験委員である明治大学法科大学院の憲法教授(67歳)が教え子の同大学院修了生(20代後半女子)に憲法の論文問題を漏洩し、あまつさえ微細に答えを指導した。

発覚は、女子学生の答案があまりに完璧で事前の漏洩がなければありえないレベルだったことによるという。もし彼女が手加減をして書いていたら(普通の感覚であれば、分からないように書く)この悪事はばれなかったはずである。見方を変えれば、他にも漏洩された受験生がいるかもしれない。

報道によると、法務省の調査時に教授は漏洩を認めなかったが、地検特捜部に調べられ、認めたとのことだ。捜索だけで逮捕がないなと思っていたが、そうだ、このまま否認であれば逮捕すると言われて認めたのだと気がついた。容疑は国家公務員法の守秘義務違反(司法試験委員は国家公務員の扱い)、刑罰は「懲役1年以下又は50万円以下の罰金」(100条)と軽いが、試験委員は解任、大学も懲戒解雇である。家庭も崩壊だろう。なにせ教え子に恋愛感情があってのこの悪事では、家族も庇いようがない。

数年前、やはり司法試験委員だった慶応大学法科大学院教授が勉強会で問題を教えたことが発覚し、大学も辞め委員も解任されたと聞く。新司法試験では各法科大学院の合格率は、とりもなおさず大学のランク付けになるので、極めて熾烈である(因みに神戸大学は今年、一橋、京大、東大に続く4位であった)。合格者ゼロの法科大学院はすでに淘汰され、合格率の低い所は軒並み定員割れを起こしている。当初3000人合格を謳い、法科大学院さえ出れば70%合格と言っていた設計は当初より実現せず、合格率25%程度で推移している。それでもなお弁護士の就職難は深刻で、議員時代、日本は訴訟社会ではないし司法書士などの隣接職種がたくさんいるのであえて法曹を増やす必要はないと言っていた私の主張は正しかったと今でも思っている。

教え子に合格してもらいたいと願うのは人間として当然である。だがそのために不正に手を染めるということは全くの別次元である。その慶応大学教授にしても(このレベルは他にもいたかもしれない)、またこの明治大学教授については色恋という私情のために悪魔に魂を売り渡していることにはたと気づかなかっただろうか。仮にも将来の法曹を決める試験なのだ。法と正義が生業の仕事に、そもそもの入口から不正を犯して入ることに、教え子もまた良心の呵責を覚えなかっただろうか。

漏洩をもし教え子から持ちかけたとしたら守秘義務違反の共犯だが、教授は自ら持ちかけたと言い、単独犯の扱いである。しかし法律違反にならないからどうだというのだ。不正の手段で入っておいて、一体どんな顔をして、人に説教したり仲裁したり出来るのだろうか。5年間の受験資格禁止といった軽い問題ではない。この馬鹿な教授と教え子によって、我々法曹が自負する司法試験の権威がどれほど傷ついたか計り知ることはできない。真っ当な合格者も、あるいは漏洩?と疑惑を招かれるかもしれず、また惜しくも不合格になった人たちはより一層悔しいはずだ。人生をかけて1点2点の熾烈な争いをしているのだから。

完全な防衛策は難しいかもしれない。組織をどう変えても、結局はそこに充てる人である。当該教授は12年も関わり、自分が受験生にとって神であるかのような勘違いをしていたことは想像に難くない。担当者を短期で変えることも必要だし、もちろん人間的に真っ当な人を選任することが肝心だ。おそらくこれから格好の週刊誌ネタとしていろいろ出てくるだろうが、ネットではすでに、教授が特定の女子学生を依怙贔屓して高級店に食事に連れて行っていたというようなことが出ている。ニックネームは「ブルー卿」だそうである。

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川口少年祖父母殺害事件、二審も懲役15年

雨が続く。当ブログのアクセス数は3日1500、4日3500。増加の理由の1つに、4日、東京高裁で上記判決が出されたことがあったようだ。私がこの事件に関して今年1月7日に記した内容が分かりやすいとのツイッターの書き込みが多数あったうえ(と知らせてくれた友人がいる)、実際メールで感想を送ってきた人も数人いたので、その反響の大きさが分かった。そう、実に衝撃的な事件である。

高裁は、一審地裁とは違い、母親の指示(強盗殺人の共謀)を認めながら(息子から祖父母を殺してキャッシュカードなどを強奪してきた旨告げられても驚かず、それどころか更なる強奪を指示したのだ)、刑を下げなかった。母親は本件を強盗として起訴され懲役4年6月の刑が確定済みなので一事不再理が働き、もはや強盗殺人で起訴されることはない。あとはこの少年の刑をどうするかの問題である(高裁なのでもはや裁判員裁判ではない)。

改めて六法で確かめた。強盗殺人の法定刑は「死刑又は無期懲役」(刑法240条後段)。当然、選択は無期懲役だ。被害者は、複数だが他人ではなく身内なので、母親が起訴されていたとしても無期懲役でしかない。二人には法律上の減軽事由(未遂、心神耗弱、過剰防衛、自首など)はないが、ひとり少年には酌むべき事情が多々あるので酌量減軽はでき、処断刑は「7年以上の有期懲役」となる(刑法71条、68条2号)。つまり、少年がもし20歳に達していたとしても、本件はこの程度の刑でしかないのである。

少年法が加われば、成人の場合より刑は軽くなる。つまり、この範囲で不定期刑を科すので(同法52条1項)おそらくは「5年以上10年以下の懲役」程度だったのではないか。前にも書いたが、検察の無期懲役求刑が無茶苦茶なのである。同じ事実において高裁は母親との共謀を認定したのだから、二人を共に起訴することは出来た。さすれば求刑は母親無期懲役、少年も上記を少し上回る程度の不定期刑求刑(有期刑の場合、判決は求刑より2割程度下がるので、求刑はその分高めにするのが慣行である)となって均衡がとれる。仮に少年だけを起訴するとしても、妥当なのがこの刑期であるのはいうまでもない。

検察だけではなく、裁判所の姿勢も問いたい。裁判所は検察の求刑に拘束されることはなく、一審懲役15年の判決を下げることはできたのだ。しかるに、なぜしなかったのだろうか。詳細が分からないので何とも言えないが、あるいは弁護側が、あくまで保護処分が相当だとして家裁への移送を求めるだけで(少年法55条)、予備的主張として、仮に刑事処罰が相当だとしても酌量減軽をして不定期刑にしてほしいと言わなかったとも考えられる。この場合、裁判所が内心では不定期刑が妥当だなと思っても、現行刑事訴訟法は民事訴訟と同様の当事者主義をとっているので、当事者の主張がない限り勝手な判断はできないのである(弁護側も一審とは違い実際に15年の判決が出た後の控訴審なので、いくらなんでも保護処分だけの主張に終始したとも思えないのだが)。

あとは上告審に適正な申立てをしてあまりにも不正義だとして覆してもらうのを期待するしか方法がない。とにかく可哀想で仕方がない。人は生まれる遺伝と環境を選べない。こんな母親に育てられ、しかし家族としてはこの母親しかいなくては、少年が善悪の判断について麻痺しても、母親に唯々諾々と従うようになっても、誰も責められないと思うのだ。

検事時代、少年事件をよく扱い、少年院にもよく行った。彼らは全体に、激しく孤独である。非行少女らの夢は意外にも?おしなべて「結婚」であり、暖かい家庭をただ夢見ている。「日曜日寮の電話が鳴る度に我が面会の知らせかと思う」、収容少女の詠んだ短歌が今でも記憶に鮮明だ。

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異様な犯罪が続く

虎ノ門のエリート・イケメン弁護士42歳が女性事務員の夫24歳に局部を切られるという猟奇的事件が起こったのは、13日朝。夫は元ボクサーしかも慶応大学ロースクール在学中。小説でもありえないほどの設定だ。勾留満期9月2日に向けて、最も気になる動機を含めて現在捜査中であり、公判では事の真相は明らかになるはずである。

女性事務員と弁護士との間に男女関係があったことは想像に難くない。寝取られた夫の怒りが妻ではなく相手の男に向かったのは、強姦ないしは準強姦(酒で酔わされた、あるいは酔っているときに)だと(のおそらくは妻の弁解を)信じていたのだと思われる。明らかなことは、加害者も被害者も瞬時で人生を台無しにしたということである。加害者はもっと冷静になれなかったのだろうかと思うし(法曹志望であればなおさらのこと)、被害者も、事務員が独身ならいざ知らず、亭主持ちであることのリスクに思いを致さなかったのかと思ってしまう。でなくても弁護士は人の恨みを買いやすい職業である。梨花の下にて冠を正さず、なのだ。

一方、大阪では中学生2人の惨殺事件が起こり、社会を震撼させた。逮捕された犯人は否認しており、男の子の死体は腐乱して死因も特定できないという。前科のある性犯罪者で、性的に狙われたのは男の子だというが、状況証拠だけで起訴が出来るのか、厳しい捜査が続いていることと思う。無事起訴となり有罪となれば、死刑相当事案と思われるが、しかしそうなっても被害者は帰らない。その最後に受けた、血も凍るような恐怖を背負って遺族は一生を過ごすことになる。

犯罪は、起こった後に何をどう言っても、捜査を尽くして最大限の判決を受けたとしても、どこか空しいものがある。犯罪は起こらないようにすること、それに越したことはないのである。大阪の事件で言えば、この子たちはなぜ家を離れ、深夜に外を徘徊していたのか。もちろん今回のように惨殺される可能性は低いにしろ、猥褻や監禁その他、どんな被害に遭ってもおかしくはない状況に彼らはいた。世の中には悪い人は結構いるし、変質者も一定数いる。中には数は少ないにしろ、今回のような快楽殺人者だっている。それが世の中の現実なのである。

親や周りの大人は、子供たちに、自らの身は自らで守る習性を身につけさせなければならないと、改めて思う。危険には近づかないこと。女性がひとりで夜歩くなど、普通の国ではもってのほか。ましてタンクトップやミニスカートでは、それこそ襲ってくれと言っているようなものだ。イスラムの教えでは女性は髪を見せてはならない(体などいわずもがな)。女性の美しさを見れば、男性はついふらふらとする。イスラムは人間に対して性弱説に立っていると思われる。

ラインがクローズアップされている。家出少年2人はラインで連絡を取って待ち合わせた。ラインやメールがない時代であれば、あるいはそれらの機器を子供に持たせていなければ、彼らは互いに連絡を取りようがなく、この徘徊、つまりはこの被害に遭うこともなかった。子供を巡る犯罪では、ここ数年来ラインが大きな位置を占めていると気づかされる(虎ノ門事件でも浮気がばれたのはおそらくはメールであろう)。子供に機器を持たせないという対処方法も必要ではなかろうか。でなくても今やスマホ中毒は深刻な問題である。人間は互いに話をし、分かり合う努力をすることが必要である。

この5月、横浜で15歳少年が母親と祖母を殺害した事件で、先日横浜家裁の裁判官は逆送決定をした。地検はこれに拘束されるので10日以内に起訴され、裁判員裁判に付され、長期15年以下での不定期刑が言い渡されることになると思われる。しかし、と思う。たしかに15歳での逆送は珍しいけれど、この少年が逆送になるくらいなら、なぜ佐世保事件の15歳少女は逆送にならなかったのだろうかと。横浜の被害者はあくまで身内だし(遺族も身内だから厳罰を望むわけでもない)、短絡的ではあっても動機はある。対する佐世保事件の被害者は、他人の少女、しかも快楽のための計画的犯行である。起訴すべきだとすれば明らかに後者である。裁判官の考え方次第で天地の差となる。遺族の胸の内を思うとやりきれない。

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ロッテホールディングス社外取締役に就任しました

17日に行われた臨時株主総会で選任され、お昼のNHKニュースで全国放送された。新聞各紙にも載ったので、あちこちから激励メールやら電話が来ることとなった。反響が大きかったのは、ロッテが日本人の誰もが知る大会社であり、また昨今のお家騒動が関心を呼んでいたからだろう。アクセス数も数日の間格段にアップしたが、でもまた元に戻ってしまった(笑)。ちょうど1週間である。

私自身もロッテのチョコレートやアイスを身近にして育った者である。また、検事時代のアジア極東犯罪防止研修所での研修・勤務や法務総合研究所勤務、また参議院議員時代の日韓議連などを通して、韓国はとても身近な存在であった。国としての姿勢は別として、個人としては素晴らしい方も多い。現にロッテ会長は、エレガントな佇まいと抑制の利いた話し方に、本物の国際人だと感服させられる。議員時代にお会いしたフランスのドピルパン首相以来かもしれない(他に感動させられたのは、山中伸弥教授である)。

社外取締役は小さな会社で経験したことがあるが、大会社は初めてである。勉強することがあまりに多い。本業はあくまで弁護士であり、傍ら大学の先生(幸い今は夏休み中なので助かっている)、その他に家裁の調停委員などいくつもの役職を持ってはいるが、この度それらとは別の大きな場・チャンスを与えられたことに心より感謝したいと思う。

いつの頃からか、自らの処世術として、信頼する人からの依頼は基本的に断らないようになった。与えられたご縁は大事にしなければならない。先般、知り合いが検事を勤め上げた後最初から独立して事務所を開くとのこと、乞われてアドバイスをした。「どんな小さな、報酬の安い事件でも、大きな事件と同じように親身になってやること。大きな事件だからといって決して報酬をぼらないこと」(他には、固定経費を固定収入で賄えるよう努力をすること、独立当初は怪しい事件が持ち込まれるので決して手を出さないこと)。なんだか当たり前のことを言っているなとも思ったけれど、当たり前のことを人は結構忘れがちになるものである。やはり人は、地道に、日々の努力を怠らず、与えられたことに感謝する気持ちを持続していかねばならないと思うのである。

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