愛子天皇でなぜダメなのですか? とよく聞かれる。今上天皇の娘で直系だし(悠仁親王は上皇の直系だが今上からは傍系となる)、イギリスでもどこでも女性も王になれるではないかと。なぜ日本だけが、天皇=男にこだわるのか?
戦前の皇室典範は、大日本帝国憲法と同位の絶対的規範であったが、戦後の皇室典範は、日本国憲法の下位にある一般の法律である。つまり、衆参共に各過半数の賛成で改正できる。今回、立法府の総意として、森英介衆院議長が発表した改正案は、「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」(1条)との皇位継承に関わるものではなく、今上天皇→秋篠宮殿下→悠仁殿下の皇位継承順は既定とする旨断っている。そのあとは? 悠仁殿下が結婚できなければ? 男子が生まれなければ? それはそのとき考えようということなのだろう。もちろん1条を改正して、今や国民の過半数が望んでいると思われる愛子天皇を認めたとしても、それによって将来の皇位継承は、低い確率が少しは高くなるにしろ、やはり蜘蛛の糸のように頼りないことと思える。
立法府の総意は、皇位継承のことは置いて、とりあえずは先細りする皇族数の確保策を巡るものだという。その柱は2点。①結婚した女性皇族が望めば皇族に留まることができる(=「皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる」(12条)を改正する)②旧11宮家の男系男子を養子として迎える(=「天皇及び皇族は、養子をすることができない」(9条)を改正する)。①の問題として、皇族に留まった女性の配偶者(夫)と子供は皇族となるのか、がある。答えは未だ確定していないようだが、自民党内では否定論が強いようだ。つまり、それを認めると女系天皇に道を開くことになるからだろう。しかし一個の家庭内で母親(妻)だけ皇族の身分で、それ以外は平民(?)というのはいささか不自然ではないのだろうか。であれば私も皇族には残りません、と心ある女性であれば考えて、皇族を離れると思われる。
次は②。昭和天皇には内親王が数人おられた。いずれも結婚して皇族の身分を離れたが、その方たちに男子の子孫がいたよねと考えたのだが、ああ、そうだ。彼らは女系だから、皇位継承から外れ、そもそも旧宮家でもないので、ここでいう養子の対象外であると気が付いた。その前の大正天皇の子供は昭和天皇以下3人の男子で、いずれも現宮家の主となったものの、高松宮と秩父宮には子供が出来ず、残っているのは三笠宮家のみである。GHQ下で皇籍離脱をさせられた旧11宮家といえば…知らなかった。天皇家との共通の祖先を「男系」で辿れば、600年以上遡らなければならないほどの遠縁だったとは! それは江戸時代より前の室町時代の話ではないですか。
うち4宮家に20代以下の未婚の男系男子がいることについて、ヒアリングを経ていると思われるが、そもそも天皇や皇族と何の縁もなく生まれ成長してきて(我々一般市民と同じである)、大人になって急に、これから皇族に入らない? ○○宮家と養子縁組しない? と言われて、うんと言うほうが普通ではないだろう。○○宮家といったって、上皇の弟君・常陸宮は高齢だし、一体どこが養子を取るのだろうか。一般抽象論としては可能でも、具体的な話になれば、実現するとも思えない。眞子さんの時のK騒動が思い出されてくる。真っ当に仕事をし、暮らしている人たちが、慣れた自由を捨ててまで入ってくるとはとても思えないし、迎える私たちも対応に困ってしまう。
森議長が「養子には皇位継承権はないが、その子供が男子であれば皇位継承権を持つ」と踏み込んだ発言をして、一斉に叩かれているが(今回は皇位継承の議論ではないのに、と)、議論の背景としては当然その含みがあったはずである。愛子さんが男系男子である皇族(=養子)と結婚して男子を産めば、その子は男系男子だから立派な皇位継承権をもつことになるわけだ。今回は女性天皇を認める方向に踏み込んではいないが、万一認めることにする場合、夫が男系男子皇族であれば、その子孫は皇位継承権をもつというわけである。こうしたスキームを素直に考えれば、養子になる男系男子は天皇皇后と養子縁組をし(婿養子である)娘さんと結婚するということなのかもしれない。しかし、愛子さんの気持ちもあるし、そんなに上手い話はないのじゃないと思ってしまう。
1条には触れないということで、愛子天皇の可能性は今のところないのだが、かつて日本には8人の女性天皇がいた。その中には推古天皇や持統天皇といった有名どころもいる。いずれも中継ぎのような立場で選ばれ、その子孫に皇位を継承させたことはない。女性天皇が男系男子皇族以外との間の子供に皇位を継承させるのであれば、それは女系天皇となる。アンケートで女性天皇及び女系天皇への賛成を聞いていたことがあるが、その違いが分かっている人は少ないと思われる。元国会議員が私に聞いてきたくらいだから。長い歴史においては男系男子が跡を継ぐということでそれなりに続いてきたのかもしれないが、限りなく候補者がいなくなっている現実を前にしては、そんなことも言ってはおれまい。天皇制がなくなれば、日本の元首は内閣総理大臣とならざるをえない。風の向きでコロコロと代わる首相が元首では外国も敬意を払ってはくれまい。日本の皇室は、平安時代以降、神を祖先に持つとされるようになった。それ故簒奪者から奪われることもなく、綿々と続いてきた天皇制であるが、権威はあるものの権力とは離れている時期が長かった。明治以降が特別なのであり、戦後は一転、「象徴」である。
ところで、スペイン王は今フェリペ6世(身長2メートル近いスポーツマン)だが、元ジャーナリストのレティシア王妃との間に設けたのは王女2人(のみ)。当然ながら長女、次女の順で王位継承権を持つ。もし女子に継承権がないのであれば、フェリペ6世には姉妹しかおらず、その子供たちに男子がいても女系になるので、うんと以前に遡るのだろうか。フェリペ6世の父親ファン・カルロス1世は共和制の独裁者だったフランシス・フランコから後継者指名を受け、1975年王政復古を実現した。その血筋はスペイン・ブルボン朝であり、ルイ14世の孫であるフェリペ5世から続いている。スペイン・ハプスブルグ家は叔姪の近親婚を繰り返した挙げ句、カルロス2世で断絶した。1700年のことだ。それでも我が国の今回養子に取ろうとする男系男子の600年前と比べれば近いことに唖然とする。
女性ないし女系天皇絶対反対と言っている人たちは、ほぼ例外なく、夫婦選択的別姓にも反対しているようである。しかし、その人たちがどれほど反対をしても、今後認められていくだろうと思われる。かつてのブログにも書いたが、数多の側室があり、御三家御三卿を設けてもなお、徳川家が続いていくのは難しかったのである。男女平等は世界の流れでもあり、女性天皇OK、女系天皇OKにきっとなっていくだろうと思うのである。