東電OL殺害事件の再審無罪──冤罪を生まないために

 今日,東電OL殺害事件の再審無罪が東京高裁で言い渡された。確定。検察において異例の無罪求刑をする決定打となったのは,被害者の体内から検出された精液,現場に残ったゴビンダ被告(ネパール)と被害者以外の体毛,そして爪の遺留物(抵抗時に残ったと考えられる),この3つのDNA型が一致したことである。普通に考えて,犯人はその男である…。

 ゴビンダ゙被告は疑われても仕方がない状況にあったのは確かである。?その部屋(渋谷の古いアパート)の鍵を持っていた,?トイレに被告の精液入りコンドームが捨てられていた,?被害者が当時持っていたはずの約4万円がなくなり,被告はその後金を人に返したりしていた,?その部屋を使い被害者と何度か売春関係にあったが知らないと嘘を言っていた…。?については1週間ほど前に関係を持った時のものだと弁解したので(ただし被害者の詳細な売春?メモには被告とおぼしき男の記載はない),その精液がいつのものなのかがかなりの争点となった。死亡発見時すでに事件後10日が経っていたからである。

 被告の血液型はB型,上記精液と体毛はO型,しかし被害者は当日その前に日本人男性とホテルで売春し,その相手がO型だったからその人のものだということになった(その男性は常連客でコンドームなしに性交した旨供述。体毛は被害者の体に付着してそこまで来たのだろうということになった)。問題は,被告にはアリバイがあったことである。幕張から渋谷に戻ってきた時間が合わないので,目撃証言を30分ずらせたのだという。被告は逮捕され,起訴された。一審無罪,判決はその部屋には他に誰かいた可能性があるとした。しかし釈放すれば帰国されてしまうため,検察当局は慌て,特別に勾留するよう高裁に働きかけた。そして高裁では一転,無期懲役。最高裁もこれを維持し,本人は服役していたが,現在周知のように,再審無罪を前提に本国に帰っている。

 殺人事件の公訴時効が撤廃されたため異例の再捜査が行われているが,事件から15年も経ち,また関係者はおそらくはみな出国,捜査は極めて難しいであろう。たとえDNA型から人が特定できたとしても,やはり自白でもなければ,その人が殺人ないし強盗殺人(殺害後金を盗んだのは別人だとも考えられる)をしたとの断定も難しい。つまり,真犯人は捕まらない。冤罪の悲劇は,捕まった当人は当然ながら,真犯人を逃すために被害者も遺族も浮かばれず,また社会も安心ができないことにある。

 近くは,ネットで爆破予告をしたとして無関係の人が捕まり,起訴されたり,少年の場合には保護観察処分を受けるなどしてしまった。冤罪が分かったのは,真犯人(まだ捕まっていない)が捜査当局をおちょくるように遠隔操作をしていたと告げたからで,結果,起訴は取り消され,処分も取り消されたが,少年は嘘の上申書まで書かせられていて,人権無視のひどい調べをしていたことが明るみになった。捜査の現場に携わっていたものとしてどんな取り調べをしていたのか,容易に想像はつく。

 いったん被疑者だと組織が決めてしまえば,戻る方向には働きにくい。自白が取れませんとか犯人ではないように思いますと言うと,どやされるであろう。無能だとされて出世に響くかもしれない。それが嫌だから勢い強引に認めさせようとする。密室だから被疑者も根負けしかねない。遠隔操作の事例では,長文をわずかの秒数で起案しているので,おかしいと思えばよいのだが,気がつかないのか(この手の分野はハッカーのほうがよほど進んでいる),気がつかない振りをする。東電OL事件にしても足利事件にしても,その他冤罪が明らかになったものはたいてい客観的な事実をないがしろにし,自分たちがいったん決めたストーリーに付き進むばかりだ。供述の捏造に留まらず,証拠物の捏造をする事例さえある。大阪特捜部による厚生労働省局長冤罪事件もまさにその構図であった。

 実は私自身もこの夏,怖い経験をした。未成年者がある盛り場で窃盗容疑で捕まった。本人には故意はなく(過失窃盗という罪はない),被害者(とされる女)からその場ですぐに指摘されて被害品も返した。だが警察はなぜかわざわざ逮捕し,被害者と名乗る女性は直ちに弁護士ないし父親に連絡をとり,示談金100万円(!)を請求した。痴漢や傷害とは違い,窃盗は財産犯であり,被害品が戻れば示談などありえないのに…だ。これだけ言うと,たいていの人は「あ,嵌られたんだ」と喝破する。そう,普通の人にはすぐに分かる。酔った者相手に窃盗容疑をねつ造するくらい訳はない。

 しかし,送検された検察庁は,少年の勾留は少年法上やむをえない場合でなければできないにかかわらず,被疑者否認を理由に勾留をした。10日後,勾留延長すらされた。さらに10日勾留されたあと,身柄付きで家裁送致となる。そこでは2週間,さらに2週間,計4週間鑑別所に留められることになる。父親から頼まれて新たな弁護人についた私は,早速主任検事にかけあったのだが,容疑を固く信じこんだままだ。であれば書類だけ家裁送致とし身柄は釈放してくれと頼んだが,否認しているのでと,にべもない。まさに人質司法だ。認めさえすれば起訴猶予(少年だから不処分)必至の軽微な事案であるのにだ。

 結論から言うと,家裁送致前に釈放してもらえたのだが,主任検事は不服だったらしい。あくまで捜査は続けると言っていたそうだ。しかし,それは一体,何のための捜査なのか…? 自らの意地や誇り?のために捜査し,その際真実は横に置いておいてというのであれば,国家権力を嵩にきた暴力に等しい。捜査は真実究明のためにある。そのために国家機関は強大な権力を与えられているのだ。警察も検察庁も裁判所も,およそ司法に携わる者はすべて,襟を正すべき時期にきているとつくづく思う。

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執筆『建物と土地の名義が違い,妻亡き後はどうすれば…』

自由民主党月刊女性誌「りぶる11月号」

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日馬富士関、おめでとうございます!

 このところ大相撲に嵌っている。7年ほど前から縁あって国技館に誘ってもらえるようになったのがきっかけだ。枡席だと飲み食いをしながら楽しめる。砂被り席では飲み食いはできないけれど、身近に力士を見ることができる。観客も一体となって楽しめるのは、他のスポーツにはない感覚のように思う。つまりスポーツではあるが、本質は興業であろう(だから、八百長云々を厳格に言うのは当らないと思うのだ)。今場所は幸い2回も国技館で観戦することができた(3日目と13日目)。

 さて当初から安馬はいた。後に転じて、日馬富士。大きな力士が占める中、100キロに満たない安馬はひとり目立って細身で、これではいくら技があっても上に行くには無理であろうと思っていた。なにせ相撲には体重制限がない。大きな力士のほうが得なのは明らかだからだ。しかし、彼はいつの間にか体を大きくし、130キロを超えた。顔つきもずいぶんと変わった。そしてついに、白鵬との全勝対決を制した前回の名古屋場所で、全勝優勝を遂げた。

 今場所の成績次第では横綱昇進の期待がかかる中、彼は一番一番、「全身全霊」で勝ち続けた。全勝で迎えた千秋楽結びの一番。白鵬が右手で回しを掴み、明らかに有利な態勢になったのを腕をまき変え、こらえにこらえて、最後下手投げで試合を制した。1分50秒の熱戦。直後、土俵に額をつけたのは「土俵の神様にお礼を言った」らしい。130キロ超えは白鵬の150キロ超えより20キロも軽い。身長188センチは、白鵬の192センチより6センチ低い。明らかに一周り小さい力士が、強い横綱に勝ったのである。努力、執念…それが彼をここまでにした。

 幕内力士約40人中、日馬富士は今でも下から二番目の軽量だ(一番軽いのは、96キロの隆の山。チェコ出身)。軽量力士でも頂点に上り詰めることが出来る。日馬富士は、やはり軽量級だった初代貴乃花を尊敬し、ビデオを丹念に研究していたそうである。ちなみに、大関で2場所連続全勝優勝を遂げたのは、双葉山、二代目貴乃花に継いで3人目の快挙だという。とにかく、すごいことである。

 モンゴル力士2人の横綱ではちっとも嬉しくないと言っている人も、たしかにいる。しかし、国際化の時代である。日本の国技とはいえ国籍は関係ないであろう。どころか、チャンスは日本人力士にも同様に与えられているのだ。願わくば日馬富士の根性を見習って、みなが相撲道に邁進してもらいたい。それこそが日本の国技をもっとずっと面白く、盛んにしていく原動力になるはずである。

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尖閣問題に思うこと

 尖閣諸島の国有化に抗議して、中国各地で民衆の暴動が激化し、今現在も収まる気配を見せない。国は20億円という法外な価格で、ずいぶんいわくつきの地主から島の所有権を買い上げた。経緯としては、まずは都で買い上げる旨知事が外国で宣言し、多額の寄付(計14億円)も募ったことから、国も引くに引けなくなってのことと思われるが、いうまでもなく、土地の所有権の帰属と領土権の問題は別個である。たとえ中国人ないしは中国国家が尖閣諸島を買ったとして、それが中国の領土にならないのと同じことだ。もし中国が尖閣を購入し、だから中国の領土だと宣言したら、日本だって怒るだろう。

 果たして、尖閣諸島は日本の領土なのか。日本はそうだとの見解を取るが、もとより中国は異なる見解を取っている。互いに俺が正しいと言い合っていても始まらないので、国際機関に提訴したほうがよいのではないかとも思う(もっとも竹島と同様、中国が応じなければ提訴はできないのだが)。さらに言うなら、真に尖閣が日本の領土であるというならば、2年前、領海侵犯の中国漁船を海上保安庁が拿捕し、公務執行妨害罪で船長を拘束した例の事件の際、法治国家としては粛々と法に従って船長を起訴し、裁判にかけるしかなかった。それを(今思い出してもぞっとするのだが)那覇地検が「日中関係を考慮して」釈放するというまったくもって筋の通らないことをしたことが、そもそも事を大きくした発端ではなかろうか。民主党政権の失策は数えれば切りがないが、最大の失策はこれに尽きると私などは思っている。

 筋の通らないことにはやはりしっぺ返しが必ずやある。政府は事態をどう収束させ、領土問題をどう解決していくのか。対する自民党も一体どうするつもりだろうか。総裁選に浮かれている場合ではない。5候補の誰もが世襲のこの総裁選、なんだかみな坊ちゃんで頼りなく、危機にある日本の舵とりを任せられるのか、著しく不安だ。右翼・左翼、保守・革新の色分けではなく、大局的見地に立って、国際社会における日本の立場をリードできる人。中国とは尖閣諸島、韓国とは竹島、ロシアとは北方4島…国家の根元にかかる領土問題を、日本はいくつも抱えている。きっちり対処できる政府が現れないものか。

 力を合わせないといけない東アジア諸国はばらばらで紛争がつきない。片やヨーロッパ大陸はEUとしてまとまり、ギリシアの経済危機その他諸般の問題を抱えているといっても、歴史問題・領土問題でもめているとはついぞ聞かない。

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執筆『父から遺留分の遺産を取り戻したいのですが・・・』

自由民主党月刊女性誌「りぶる10月分」

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