私は実は昔からヨーロッパの王室が大好きである。その昔英字新聞を購読していたとき、結構王室関連記事はあり、内容も詳しかったので、わくわくしながら読んだものだ。王室の代表は英国だが、スペイン、ベルギー、オランダ、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーの王室も知られる。小さな国ではルクセンブルク、モナコ。別の地域にまで広げると、ヨルダン、モロッコ、タイ、ブータン、ブルネイ…。王室の華は女性である。美しくファッショナブルな女王、王妃と王女。女優ほどの美貌やスタイルは望めなくても、国を背負った威厳や気品は女優の比ではない。
デンマーク現国王の妻メアリー王妃はオーストラリア出身である(シドニーオリンピックの際にたまたま?知り合った)。もちろん平民だが、非常にファッショナブルで評判が良い。国王の弟ヨアキムは中国系の女性と結婚して大きな話題をよび(英字新聞一面にわたる記事だった)、男児2人を設けたが、その後離婚。ヨアキムはパリ出身のマリーと再婚してさらに1男1女を設けたものの、王室のスリム化号令の下、今では一家で王籍を無くしている。現国王には2男2女がおり、長男が後継となる。
北欧の王室は互いに密接に繋がっているのだが、ノルウェーの現国王はすでに90歳を過ぎ、世界で一番の長老である。その妃は同王室初の平民出身で、2人の関係は9年間もの間秘密にされていたらしい。2人とも未だに国民の敬愛を集めている。子供は2人。長女は小説家と結婚し3女を設けたが離婚(その後夫は自殺)、一昨年だか、黒人の自称霊媒師と反対を押し切って再婚し、大きなニュースになった。弟ホーコンが王太子(皇室ではないので皇太子ではなく王太子とよぶのが正しいと思う)で今52歳。背が高くなかなハンサムで、善良そうな顔をしている。問題はその妃、メッテ・マリット(同い年)。彼女は学歴もキャリアもなく、オスロ大学でウェイトレスをしているときに王太子と知り合い、同棲を始めた(王太子がそんなに軽薄でよいのか!?)。彼女はシングルマザーで、息子マリウスの父親は薬物犯罪者で刑務所入所中。彼女自身麻薬をやり、ひどく荒れた生活を送った過去を持つ。当然ながら両親も大反対したが、世間知らずの王太子は押し切った(結婚を認めてくれなければ王室を離脱すると言えば、他に後継者がいない親は弱い)。彼女が国民の前で涙ながらに過去を悔いて共感を勝ち得たシーンは私も見たが、私もすっかり騙されていた。国王らは、嫁のコミュニケーション力が素晴らしいと褒め称えていた。
連れ子マリウスも王室に入れてもらい、王太子の娘・息子が生まれた後も、分け隔てなく可愛がられていた。色白金髪のとても可愛い子でリトルマリウスは国民の注視の的だったのだが、どこでどう間違えたのか、今では全身に入れ墨を入れ、大学も続かず正業にもつかず、2年程前から警察沙汰でのみ世間を賑わすようになった。逮捕歴、実に4回。レイプ4件を筆頭に、暴力、器物損壊、証人威迫、大量の薬物運搬等々、今月オスロ地裁で始まった刑事裁判の公訴事実は全部で38件に上るという。今、29歳。マリウスはスピード違反などの軽罪のみを認め、あとはすべて否認。被害者らは公判によばれることになるだろう。オスロには世界中から報道陣が集まっているが、マリウスに昔の面影は全くなく、すでに完全な悪人面である。父親が前科者だった血はやはり争えないものである。今回知ったが、母親の父親(祖父)にも前科があるという。よくぞまあ、そんな女との結婚を許したものである。一般家庭でも許さないのに、まして国家と国民を象徴する王室なのである。
それに追い打ちを掛けるように、問題の王妃そのものの、恐ろしすぎるスキャンダルが噴出した。アメリカの小児性愛者で犯罪者、大富豪のエプスタインとの親しすぎる交流である。米国司法省が一部黒塗りとはいえ開示した2人のメールのやり取りは1000通にも上る。2011年~14年。ほぼ毎日やり取りをしていた計算になる。エプスタインと交流して自らも買春したと言われる英国のアンドリュー王子はこの件により王籍を剥奪された。エプスタインは2019年に拘置所で自殺したが(66歳。口封じに殺害されたとも言われる)、そのとき王妃は「どんな人か知らなかった。検索しなかった」と弁解して自己の判断能力の欠如を謝罪したが、今回公開されたメールでは「検索したら、あなたあまり評判が良くないみたいね(笑)」と言っていて、嘘を言っていたことが丸わかりとなった。sweetheart (恋人)と呼びかけ、フロリダの豪邸(性犯罪が行われた場所)にも招かれて宿泊し写真を撮られている。王太子は、妻を放ったらかしで監視も監督もしていないのである。宮廷も組織としても体をなしていない。マリウスはもちろんだが、このスキャンダルは王妃自身に関わることだけに、限りなく重大であり、ノルウェーは毎日このニュースで持ちきりだという。それはそうだろう。日本の皇室でこんなことが起こったらと考えるだけで恐ろしい。
とにかく彼女は底抜けに軽くて、もとより知性のかけらもない。15歳の息子(マリウス)の壁紙(パソコンの背景写真?)を裸の女性2人がサーフィンをしている写真にするのはどう思う?とエプスタインに聞き、「それは本人が決めることだ」「いいえ、我が家ではママが決めるのよ」! ただでさえ遺伝子が良くない息子がこんな環境に育てば、ますます野放しになるはずである。バリバリの性犯罪者になった息子に性犯罪者と親しく楽しく交遊していた母親。笑えない一致である。「ここで私は退屈で死にそうよ」「私に会うこと以外に何かしてくれることはないの?」と国民が呆れ果てる言葉が続き、おまけに「ルクセンブルク王太子の結婚式に行ったけれど、本当に退屈だった」と王室外交を無にする言葉も平気である。心底、誰であれ付き合いを避けたい、とんでもない人なのだ。こんな女の本質も見抜けず、20年以上連れ添ってきた夫は一体どんな人間だろうか。彼に普通の良識があれば、 こんな女を妻にすることはなく、王室の危機を招くこうした事態になりようがなかったのだ。さすがに後悔しているのだろうか、それともただ運が悪かったと思っているのだろうか。
この際王太子には王位を離脱してほしいとか、離婚してほしいとかの声は高まるだろうと思うが、次の王位は長女のアレクサンドラ王女である。一見気品のある美人であり、今オーストラリアに留学中だが、彼女の母親がこういう人であり、彼女の半分はその遺伝によると考えると、本当のところはどんな人であるのか、全く分からない。母親を王妃にすることなく娘が現国王からすぐに王位を継ぐとしても、母親の存在を消すことはできない。異母兄が犯罪者であることも消せない。どこの王室であれ、彼女との交際は身構えるであろう。であればいっそ、王室を廃止して、共和制にするという選択肢も国民にはあるだろう(フィンランドには王室はない)。とんでもない結婚によってもたらされた、世界中の知る恥ずかしいスキャンダルによってノルウェー国民が陥っている状況を思うとき、本当に気の毒で同情を禁じ得ない。小室騒動はだいぶ前になるが、比べるべくもなく、まだ軽い打撃だったように思われる。



