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「誰にでも分かる刑法各論」書評(法学セミナー5月号)
カテゴリー: 最近思うこと
「誰にでも分かる刑法各論」書評(法学セミナー5月号) はコメントを受け付けていません
マスコミの勉強不足に驚く
今週初めのこと、某地方テレビ局の女性記者が事務所まで取材に来た。危険運転致死傷罪(刑法208条の2)を新設した際の自民党法務委員会での質問者が私だったのでとのこと。その地方では去年、以下のような事件があったらしい。
外国人労働者が無免許で飲酒運転をし、未成年者を轢き逃げ、3時間後に捕まったが酒気帯びであり(酒酔いのレベルには達せず)、警察は自動車運転過失致死罪(刑法211条2項)で送検をした。検察もそのまま起訴をし、先ほどあった求刑は懲役10年。判決はまもなく言い渡されるが不当だと、1人息子を失った両親が街頭署名を多数集め、そのテレビ局が連日?その事件を流しているとのことである。何が不当かといえば、この事件が危険運転致死にならないということが、だそうである。危険運転致死に当たれば、もちろん法定刑は高くなり、求刑も高くなる。しかし、である…。
罪刑法定主義をこの記者(及びテレビ局)は知らないのだ。その罪に問うためにはその条文の定める構成要件に当らなければならない。危険運転致死は故意犯の構成であり、それに問うためには酒酔いの状態であることなど、過失犯とは異なってハードルが高いのだ。なぜ危険運転致死罪で起訴しなかったか、それはそれだけの証拠がなかったからだ。そもそも警察段階でその罪名では立件できなかったのだから(検察官が起訴に当たって罪名を落とすことはよくあるが)、よほど証拠が揃わなかったのだ。しかし、記者は警察や検察官に非を求めているらしい。遺族の方はお気の毒であるが、それとこれとは別の話である。
記者いわく「二審でひっくり返りませんかね」!? まさか、「刑事訴訟は当事者主義だから、検察官の訴因に裁判所は拘束されるのですよ」。きょとん。戦後、刑事訴訟においても民事訴訟同様の当事者主義が採られ、原告(検察官)が設定した訴因(この件では「自動車運転過失致死」)に裁判所は拘束され、異なる罪名での認定はできないのである。もちろん殺人罪を傷害致死罪で認定するといったことはあるが、その場合は縮小認定であり、被告の防御権を侵害しないので良いのである。つまり、一審では自動車運転過失致死での有罪か無罪かの認定しかありえず、これに対して被告が控訴しても原告が控訴しても、二審の罪名もまた同じでしかない。審理の土俵はその罪名以下でしかないのである。
署名は、法律を改正して無免許を危険運転致死の構成要件に含めようということのようである。しかし免許の有無は行政上のことで道交法違反で処罰されるし、そもそも免許の有無と運転の技術レベルとは必ずしも一致するわけではない。そして同罪にはすでに未熟運転の態様も含めているから、実質的にそれで足りるのだ。「でも法律が変わったら、裁判も変わりませんか」!? まさか。「遡及処罰の禁止、事後法の禁止があるでしょ」、記者きょとん。「つまり、事件当時にはなかった法律を遡及して適用してたら罪刑法定主義は骨抜きじゃない、それは憲法にも書いてある基本の基本じゃないの」。記者は始終とんちんかん。要するに私に、そうですねその事案はひどいですね、危険運転致死を適用すべきですねと言ってもらいたかったのだと腹は読めたが、とんでもないことである。
どこも取材は無償である。こんな馬鹿者を相手に貴重な時間を割かれてはたまったものではない。論理どころか基本も知らなくて、煽情的かつ無責任に世論を盛り上げようという姿勢には百害こそあれ一利もない。新聞関係の記者の知り合いが多いのでこの件を伝えると、みな一様に「テレビ局は程度が悪い」。本当に、困ったものである。記者だから、取材で役に立つかもしれない、と思っているからこそみな時間を割くのである。無償で人の時間を割いてもらい話を聞けることを、自らの特権であるかのように勘違いするのだからよけいに始末に悪い。
カテゴリー: 最近思うこと
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光市母子殺害事件確定に思うこと
一昨日、ようやくに光市事件が死刑で確定した。事件から実に13年! 本村さん、本当にお疲れ様でした。前にも書いたし、報道で見て誰もが分かるように、実に誠実で立派な方なのである。だからこそ、ここまで頑張れたのだろう。犯人が死刑になっても最愛のご家族は戻ってはこないが、しかし、犯罪被害者の地位は格段に向上した。
残忍極まりない事件であった。犯人が成人であれば、あるいは19歳であれば、文句なく死刑相当事案である。しかし、犯時18歳1か月。少年法は犯時18歳未満は死刑に処せられない旨規定しているため、もし1か月前であれば死刑に処せず、そのことが1審・2審の無期懲役につながった(求刑は死刑)。検察の上告を受けて、最高裁は審理を高裁に差し戻す。そこで死刑判決。これまでの経緯からして最高裁もそのまま死刑を維持すると踏んでいたが、予想どおりであった。ちなみに現行少年法が施行されたのは昭和24年だから、以前はたとえ17歳でも死刑が執行されていた。また、諸外国では少年故にそれほどの特別扱いはない。
今回の最高裁の反対意見に、被告人は精神的に未熟で18歳未満に等しいとの意見があり(弁護士出身)、弁護団もそう言っているが、これはおかしい。法律は法律であり、適用は一律でなければならない。こうした意見がまかり通るのであれば、成人だが精神的には未熟で少年に等しいと言えば、少年法が適用されるのかということにもなろう。知的に遅れていることを理由に心神耗弱と認定されるのであれば、刑は必要的に減軽となり(刑法39条2項)、死刑相当が無期懲役以下に下がるのであるから、そちらに拠るべきである。
被告人の、父親に暴力を受け続け母親に自殺されたという境遇は、たしかに気の毒である。だが、被害者には何の関係もなく、何の落ち度もないから、それ故に罪を減じる理由にはならない。世の中にはよく、凶悪な事件が起こる度に、なぜこんなことをしたのか分からない、裁判でそれが解明されるべきなのに解明されていないと真顔で論評する人がいるが(例えば、宮崎勤事件やオウム事件などもそうだった)、しかし世の中には理由なり原因が分からないことが山ほどあるだろう。癌も各種難病も各種精神病もそうだ。ひとり犯罪だけは解明されるべきだ、裁判にかけさえすればと期待なり要望をするのは不思議でならない。もっとも考えようによれば、唯一絶対の神が存在しない日本だから、司法に神の役割が担わされているのかもしれないのだが。
被告人は荒唐無稽な弁解に終始し、殺意と強姦の故意を争った。それも決定的に裁判官の心証を悪くし、死刑の結論につながったと思われる。更生は、自らがやったことを認め、深く反省することによってのみ可能である。神に対してであれば懺悔であり、刑事司法では自白が必須である。被害者が悪い、故意はない、運が悪い、と言っているうちは反省もなく、更生もありえない。更生できない者に無期懲役の選択はないであろう。事案が事案だし、法律的に死刑は科しうるのであるから。
この度本村さんが再婚されていると知って、少しく安堵した。どうぞこれで一区切りをつけ、新しい人生を歩まれてほしいと心より願っている。横田めぐみさんのお母様もやはり立派な方で心打たれた思い出が鮮明だ。まもなく1年になる大震災の時にも立派な方々の報道に接したが、市井に生きる中に実に立派な方々がおられるものである。
カテゴリー: 最近思うこと
光市母子殺害事件確定に思うこと はコメントを受け付けていません
執筆『あやしい土地を購入した母騙されたと思うのですが・・・』
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