首相突然の辞任劇,総裁選に思うこと

 12日の首相の突然の辞任を受けて,自民党総裁選が始まった。23日の投票に向けて,メディアもすっかりはまっているようだ。
 当初誰もが後継は麻生氏と思っていたのが,福田氏が担ぎ出された。昨年の総裁選は派閥が安倍を推すということで出馬しなかったが,今回は派閥一致で大丈夫と保障されたので出るということだ。人間がどうかという以前に,安倍内閣と一線を画していただけに福田氏に分があるであろう。あと麻生氏がどこまで健闘できるか。
 しかし,なぜこの2人だけか。チルドレンは自己保身のために小泉に再登板を強く陳情した。そんな見苦しいことをするくらいなら,数を頼んで,自ら若き総裁候補を擁立すべきであったろう。私が臨んだ総裁選は4回。すべて候補者は4人いた。若手が自らの候補を擁立しようと躍起になって,トルコに出張中の私にまで,推薦人が一人足りないから名を連ねてくれと懇願する電話が夜中にかかってきたこともある。そんな熱気が,今は昔。

 しかし,総裁選などに浮かれている場合か,自民党もメディアも。閣僚がお見舞いの手紙を出す? なんだ,これは。
 このところ心にずっと澱がたまっている。本来今は国会中なのに,すべてが停止している。政治に空白は許されないとのたまい,国民の審判を無視して続投したのは誰なのか。身命を賭すと軽々しく言っていなかったか。直前,職を賭すと言ったではないか。この人の言葉すべてに意味がなかったことはもはや明らかだ。言葉に徹頭徹尾責任が伴わない,特異な人であった。
 小沢に責任をなすりつけ,まったくもって支離滅裂な辞任理由を述べた。国民への謝罪もないのは,自分が悪いとはつゆも思っていないからであろう。ひとり拉致問題で名を売ったのに,拉致家族への謝罪も当然になかった。総理以前に政治家の資質に欠けるのだ。当然議員辞職すべきである。とは,自分は一生懸命にやったのに,周囲やら運が悪くて報われなかった被害者であると考えているはずのこの人の頭には浮かばないだろうから,周りがやめさせなければならない。それこそ自民党の存亡がかかっているのである。
 もし議員辞職をしないのなら野党は辞職勧告決議案を出すべきだ。自民党もそれを簡単には拒否できないはずである。拒否をしたら国民に対して,安倍の無責任を擁護したことになる。

 彼を首相に選んだのは国民ではない。昨年の総裁選で自民党が選んだ。見栄えと家柄がいい,拉致問題で国民的人気があり,来年の参院選の顔になるからという理由で。ここまで無能だとは思わなかったというのが本音であろうが,いずれにしても国民に対して欠陥商品を売りつけたのである。欠陥がだんだんに露呈してきて,国民は参院選でリコールした。それを無視して続投をさせ,このざまである。所信表明後の突然の辞任など,病気で倒れないかぎり,ありえない。これが国際社会に対してどれほどの恥辱であるか,安倍自身が考えられないのであれば,自民党の幹部たちがもっと真剣に考えてほしいと切望する。
 自民党がこのまま平穏に次の総裁を選び,その総裁が総理になれるシステムというのは国際社会に分かりやすいことだろうか。少なくとも多くの日本国民の感情としてはそぐわないことであろう。

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