執筆「読む度に心が洗われる本。 名作には感動を呼ぶ品格がある。」

 本を読め読めと人に言うわりに、私自身は実は、さほどの読書家ではない。本屋にはあまり行かず、必要な物は注文で済ませているほどだ。仕事柄毎日活字に親しんではいるが、趣味で読む物といえば音楽関係くらいである。
 そんな私が、十年ほど前までは小説を書いていたのである! 子どもの頃から本はよく読んでいた。自ら書くようになって徐々に、作家の資質として必要不可欠な、細部にわたる描写能力が残念ながら私には欠けていると自覚し始め、それとともに読書量が減った。
 もちろん、話題の本を買って、上手いと感心したり、情報量に感謝したりはするが、再読となるとめったにない。そんな本は誰でもせいぜいが一割程度らしい。つまり、本の賢い利用方法は、借りて読み、中で、手元に置きたい本だけを買うことなのだ。そうしておけば本がどんどん増え、置き場所に困ることもない。
 徐々に賢い利用者になったのか、私は今、とんと本を買わない。日常の時間がふっと空いて、心が別の世界を渇望していると感じるときは、自分の本棚に手を伸ばすのである。
 古今東西の歴史物、古典物。何度読んでも、頁を捲りさえすればそこには新鮮な世界が広がる。日本の近代では夏目漱石、新しい所で藤沢周平。読む度に心が洗われる。名作の名作たる所以であろう。
 はて、名作の本質とは何だろう。と考えていて、思い当たった。今、流行りの「品格」という言葉。音楽でも絵でも映画でもすべて、本物には品格がある。真摯に、まっとうに作品に取り組む姿勢、そして真の才能。感動こそ人の生きている証、そして感動は時代を超えて、普遍である。

自由民主党月刊女性誌
『りぶる』

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