高畑祐太事件に思うこと(その3)

昨日、秋場所千秋楽。豪栄道は琴奨菊に完勝して全勝(遠藤も自己最高の13勝で技能賞を獲得)。日本人力士の全勝優勝は、20年前の貴ノ花にまで遡るという。私の記憶にある豪栄道は、強い力士との取組前はいかにも情けなさそうなで、見ただけでこれは負けると直感した(そして実際負けていた)が、今回、顔つきが違っていた。自然な、悟りを開いたような穏やかな顔。これは勝つなと思ったら、案の定だった。自信がつけば、人は変わる。来場所が正念場である。祝い事や宴席に現を抜かすことなく、さらに稽古に励んでもらいたいと思う。

ところで、表題の事件。とりわけ関心があるわけではない。事件自体はどこにでもありそうなことなのだが、被疑者が有名人(ことにその母親)であることで後を引いている。一つは、弁護士からの、普通はありえない釈明FAX。そして次が週刊誌の記事である。後者は広告しか見ていないのだが、おおよその見当はつく。

実は私自身、被害者もある意味でまともではないことに当然ながら気づいていた。40代女性がひとり夜間のホテルに勤務している。事件後、警察に電話をしたのは「知人男性」。ヒモだ! 歯ブラシ云々のきっかけは女側の作り話であって(恋人なり親しい男性がいる場合はことに自分は悪くなかったと言いたい)、本当のところは、女は被疑者からしつこく誘われて一緒に部屋まで行ったのかもしれない。それまでの間にすでに被疑者はキスまでしていて、あとも当然オーケーだと思って事に及んだら、あに図らんや、女は食わせ物で、後ろに怖いお兄さん(おじさん?)がついていたというケースだったのかもしれない。

強姦罪が「不本意な性交渉」で成立するとする国もあるが、日本ではハードルが高く、「暴行又は脅迫を用い」(刑法177条)、その結果「被害者の抵抗を著しく困難にさせて」セックスするものでなければならない。客観的にその程度の暴行脅迫であることばかりか、主観的にも自分がそうしているとの認識(故意)が必要だ。そこまでの程度に至らない暴行脅迫の場合には強姦罪とはならないし、「結婚してやる」「芸能界にコネをつけてやる」と言って騙していた場合もならないし、例えばいわゆるセクハラやパワハラで上司の求めに応じ、断り切れず、いやいやながら応じた場合も強姦罪にはならない。‥被疑者の場合もなりませんよということを弁護士は主張したかったのだと考えることができる。

だが、それを一方的に、相手の承諾もなくやったことが弁護士倫理に照らして許されないと思ったものだが、上に述べたありうる背景事情かつまた(報道によると)1500万円という相場より遥かに高い示談金から推測するに、そのことにもまた相手方の承諾を得ていたと考えるのがきっと妥当なのであろう。被害者は名誉よりも、実利(お金)を取った。警察や検察、そしてマスコミはうまく使われたのである‥?!

しかし、冷静に考えるべきは、彼は無理やりそうさせられたわけではないことである。女が部屋まで押しかけてきて勝手に服を脱いだというケースとはまるで違う。刑法上の強姦罪には当たらないとしても、不本意な性交渉であるのは事実である(故に民法上は違法であり、金銭賠償はしなければならない)。セクハラやパワハラを考えてほしい。上司の求めを拒否しなかったから、純粋に和姦か?(まさか) と同様に、客から執拗に部屋に来てと言われ、ひとりで当直中の勤め人が(他に男性スタッフがいればもちろんこんなことは起こらない)「お客さん、警察をよびますよ」と断固拒否できるか。それでもなお、女は合意していたと考えるとしたら、根本的に考え方が誤っているというべきである。たとえアポロのような美青年であったとしても、その場で直ちにセックスに合意をする女性が(そういう職場でない限り)一体どれだけいるというのか。KS(空気を読めない)は怖い。自分のほうが被害者だといった考え間違いをするようであれば、また同じようなことが起きるだろう。事実を直視せず、真の反省を欠くところに再犯はあり、残念ながら、再犯は実に多いのである。

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