曇り、そして雨の業種について思うこと

土曜の夜、2ヶ月に一度位の割合いで、隣のご夫妻と、ご近所で話題の飲食店に行っている。ご主人は大手新聞社勤務、奥様は大手アパレル勤務。偶然だが、奥様は神戸出身で、名前も私と同じ「知子」である(笑)。

その老舗新聞社はいろいろな問題があって購読者が激減、多大の経営難を何年も前から言われている。格別の優遇措置をつけて希望退職を募ること数回、最初の頃は有望な記者だけが辞めていくと言われていたようだが、最近では応募者がそもそも少ないそうである。給料を少し下げるとはいえ、もともと高給で知られる会社を、おいそれとはやめられないだろうと思う。

全体に、新聞は、先行きの暗い業種といえるだろう。手軽なネット時代、新聞を読まない人は増えるばかり。20代以下はもちろん、30代、いや40代でも読まない人のほうが多数派かもしれない。私の世代では、新聞は生活の必需品であり、新聞を開けることで一日が始まるような感じだった。それは歯を磨くことや朝食を食べることと同様、生活習慣なのである。今は同時にネット契約もしているので、パソコンを開けばニュースは入手できるのだが、紙で読まないと読んだ気がしない…。

新聞業界ばかりか出版業界も大変である。ゲームに嵌まっている故なのか、読書離れは進むばかり。キンドルというらしいが、スマホで小説を読んでいる人も電車内で時々見かけるが、ニュース程度であればともかく、小説のような物語は落ち着かないし、話に没入できない…しかし、こうした人種は、そのうちに絶滅危惧種になっていくのかもしれない。

アパレル業界も大変だ。大手4社いずれも業績悪化の中、件の奥様はついに希望退職に応じることにしたという。わりとさばさばしておられる。ご主人に扶養手当が入るので、いろいろなことをしたいというのだ。しかし、これが一家を担う男性であれば、経済的な問題が先に立ち、そう簡単には踏み切れないはずである。ユニクロに始まり、世界中から、格安なZARAやH&Mなどが入ってくるわ、ネット通販で何でもが安く手軽に手に入るわ、…の時代なのである。シャネルやグッチやプラダなど、世界の超一流ブランドを別にすれば、どこも売れ行きが低迷するのは自然の成り行きだろうと思われる。

アパレル不況は、デパート不況に直結する。どこも軒並み売上げが低迷し、次々と地方のデパートが閉鎖し、その以前から総合スーパーは閉店が続いていた。アパレルでなくても欲しい物はネット通販で手軽に手に入る時代、時間と手間をかけてデパートにわざわざ足を運ぶ動機は、何だろうか。気晴らし…? 新しい商品を見て、楽しみたい…? 実際、私がデパートに行くのは、お洒落が大好きで、新しい流行をチェックしたいからであって、もしその興味がなければ、せいぜいがデパ地下に行くだけになりそうである。

一時は莫大な利益を上げていた免税店も、中国人の爆買がひとまず止み、安い商品しか売れなくなったという。モノからコトへ。関心もいち早く変わっていく。見渡すと、例えば、造船業界は不況である。自動車も自動運転に変わっていくだろうから、運転手も要らなくなるだろう。振り返れば、私が検事になった頃、起訴状を打ってもらうのに確保が大変だったタイピストも、パソコンの登場で、とうの昔に消えている。印刷屋しかり。業種ばかりか職種でも、弁護士は増やしすぎて生き残りの厳しい時代になっている。歯医者はかなり前からコンビニより多いと言われるほど超過剰だ。そのコンビニも互いにしのぎを削り合って、陶太される店も加速化するであろう。

その点、食品製造業には不況がなくて良いですね、とよく言われる。たしかに、食べることは、人間が生きている限りの必需品である。着ることその他は削っても、食べることは削れない。加速化する少子高齢化時代を見据えれば、その二大要素は「健康と美容」である。就職内定が決まって、大喜びの新入社員の映像を見ながら、彼らが入ったその会社が時代の波ですたれず生き残っていくことを、祈る気持ちになっている。

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