小沢対特捜部

 昨日の通常国会前に特捜部は,かねて調べてきた石川議員を政治資金規正法違反(虚偽記載)で在宅起訴──というように聞いていた。
 ところが,13日には関係各所に強制捜査(捜索差押え)が入った。暦を見ると「先負」。縁起が悪いから普通こういう日にはしないのだが,特捜部もよほど焦っているのだろう。身柄確保(逮捕)は少し遅れて15日夜,「赤口」。
  国会開会中は現職国会議員には不逮捕特権がある。ぎりぎりの日程だった。新旧の秘書も併せた逮捕者は3人。うち大久保秘書は,昨年3月に逮捕されて現在公判中だ。この容疑は以前に書いたが,2000万円程度の政治資金規正法違反にすぎない。しかもまったくの不記載ではなく記載はしたが,その団体の実態が別にあることを知っていたから虚偽記載だ,というそもそもがきわどい容疑であった。無罪になる可能性が大きいと思っていたが,実際,公判の推移で無罪の公算が高まっていると漏れ聞く。逮捕容疑があまりにちゃちかったので,それは突破口にすぎずきっと悪質な事犯が出るはずという読みが外れたのは当初の私の予想どおりであった。

 小沢は嫌いである。顔も喋り方も存在も政治手法も。政治とは言葉で人々を説得するものなのに,彼はまっとうな演説も討論もできない。なのになぜ権力が集中するかといえば,集金方法及び選挙を熟知しているからであろう。田中角栄,金丸信に連なる金権体質の政治家は政界から一掃してほしいと願っているが,ただ,だからといって今回の捜査を是とするかは,自ずから別問題である。
 以前から再三主張しているように,主権在民である。国民が選挙で代表者を選び,国を変える,それが民主主義なのだ。一方特捜部は国民の信を得ていない。その特捜部によって国の在り方が変わってよいはずはない。もちろん法治国家だから収賄など明らかに法に触れる犯罪が出てくれば別だが,狙いを定めて何でもいいから洗うというのは越権である。
 4億円が今回ゼネコンから渡った裏金で,その金を土地買収にそのまま使った,という明らかな証拠でもあれば別だが,今回裏を取っているのは5000万円に過ぎない。あとは関係者を逮捕して何かをはかせようというのであれば,前近代的な手法である。

 問題は特捜部がリーク合戦をしているということである。リークをしてメディアに悪者として取りあげてもらい世論を盛り上げるというのは特捜部の常とう手段であり,メディアもネタがほしいがために批判をしないという悪循環が作られてきたが,本来,捜査の内容を漏らすことは国家公務員法違反にも該当することなのだ。
真に証拠がきっちりあれば,黙々と捜査をして20日後に起訴をすればすみ,これほどのリークをする必要はないので,これは特捜部の焦りと見てとれる。

 自民党も特捜部待ち,敵失で浮かれているようでは情けない。
 国民は雇用問題,景気対策を真に願っている。国会でやるべきことは盛りだくさんだ。自民党も含め政治家が自ら引き起こしている金銭問題に終始するために国民は代表を選んでいるわけでも高い歳費を払っているわけでもない。そのことを肝に銘じてほしいが,どうやらバッジをつけるとみな正常な国民感覚を忘れてしまうものらしい。

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