1月3日、アメリカが突如ベネズエラに特殊部隊を侵攻させ、マドゥロ大統領夫妻をアメリカに拉致するという、前代未聞の事件が起こった。大統領らに対してはアメリカは麻薬戦争を戦っていると称して、すでに多額の懸賞金を掛けていたのだが、彼らを誰かがアメリカの主権内に連れてきたのであればともかく、ベネズエラ国の主権内に自ら踏み込んで拉致するなど、それは立派な犯罪であり、およそ法治国家としては考えられないことである。
大統領夫妻は、すでに麻薬関連の複数の罪で起訴済みであったらしく(しかし、妻も共犯で共に被告人なのか?)、すぐにニューヨークで公判が開かれ、両者ともに罪状を否認したという。 陪審裁判といっても、我々に馴染みのある小陪審(通常12人の陪審員で、有罪無罪を決める裁判)ではなく大陪審(陪審員は20人以上)で、起訴に正当な理由があるかどうかを決める、いわば捜査のような裁判であるとのこと。ここらへんは日本と法制度が全く異なるので、どうなっているのか分からない。次回公判は3月。大陪審は非公開なので、裁判の映像は流れていない。この間被告人として、大統領夫妻は拘置所にいるのだろうか? ベネズエラでは暫定大統領として、女性の副大統領が就任した(昨年ノーベル平和賞を受賞したベネズエラの野党指導者も女性である)。
トランプは作戦が大成功だと自画自賛した。たしかにその軍事力が世界随一であることは認めるが、しかし、アメリカ側死傷者はゼロであるものの、ベネズエラ側では70人だかが犠牲になったのだ(その半数はキューバ人)。しかも、麻薬戦争に対する防衛手段といった法的主張?はすぐに鳴りを潜め、石油の話が主になった。ベネズエラが世界一の埋蔵量を誇る産油国でなければ、こうした強硬手段が執られることはなかったのではないか。トランプはコロンビア、メキシコ、そしてキューバもターゲットにしている。西半球はアメリカのものだとの主張は、かつてヨーロッパの戦争には介入しないとするモンロー主義に擬して、ドンロー主義と言われるようである。対して東半球はヨーロッパとアジアに任せるということかもしれないが、イランでの暴動には積極的に口を出してきているところをみると(とにかく何でも口を挟みたい性分である)、重点は置かないよという程度の意味なのかもしれない。カナダはアメリカの51番目の州であると失礼過ぎることを言っていたが、デンマーク領のグリーンランドを購入する話も俄に熱を帯びてきた。この話に乗らなければ軍事攻撃も辞さないなど、脅し以外の何ものでもない。まさに力こそ正義。原住民から無法にすべてを取り上げていった西部劇を見る思いがする。
考えてみれば、我々は平和が当たり前で、ロシアのウクライナ戦争が来月で5年になることに目を見張っているが、人類の長い歴史で戦争がなかったのは、第二次世界大戦後から今日までの80年ほどでしかない。日本についていえばその前には徳川幕府下の300年近くが平和だっただけであろう。世界各地では、内戦や宗教戦争などはどこにでもあって、平和で安全な暮らしなど知らない人たちも大勢いるのである。アメリカの独善的行動は、平和ボケしてきた頭に冷水を浴びせてくれた。自ら他国の主権を堂々と侵害するアメリカにとって、中国の一部であると国際的に認定されている台湾(日本もそう認めている)に中国が軍事行動をしかけてきたからといって、どういう理由で介入できるであろうか。日本の同盟国アメリカが軍事を発動させなければ、日本としては集団的自衛権を行使することもできないのである(高市首相発言の前提が崩れることになる)。
さて国内。まさかとは思っていたが、23日召集通常国会の冒頭に高市首相は解散に打って出るという。支持率が高いとはいえ(しかし、78%なんてありえない!)、それは首相個人の、あるいは内閣支持率であって、自民党支持率が高いわけではない。もともと小選挙区は個々の候補者の人気次第なのである。おまけに公明党の選挙協力はもはやないのだ(その票は野党に流れるので差は二倍になる)。政治資金問題はずっと尾を引いていて、前回公認を得られなかったり比例を外されたりした議員は逆風のままであろう。自民党候補者の空いた選挙区も数あるが、この短期間に誰かを割り振るのか(不戦敗にするわけにはいくまい)。一大ギャンブルをして(去年総選挙をしたばかりなのに、また多額の税金を使うのだ)、自民党の単独過半数を期待しているのだろうが、そんなにうまくはいかないのではないか。2月8日に選挙だとして、特別国会を召集して予算審議に移る。ここでも連立を組まないといけないだろうし、参議院は過半数割れしたままである。何をどう考えても予算の年度内成立は無理である。物価高に喘いでいる国民は蚊帳の外で、自分たちの信念が絶対なのか。それはバランスを欠き、正義ではないと思える。そもそも厳寒での選挙は北国はもちろん、どこであれ高齢者に酷である。ああ嫌だなあと単純に思っている人も多いのではないだろうか。



