三浦逮捕,法相の冤罪発言……

 いつも思うのだが,ニュースはひっきりなしに起こり,マスコミは飯の種に困らないものだ。
 イージス艦が漁船に衝突し,そうこうするうちに三浦和義がサイパンで逮捕された。いわゆるロス疑惑って27年前も前だったの? と,びっくりした。私が横浜地検にいた時代だ。たしかに日本中が騒いでいた。先般大学の同僚がロス疑惑を学生に話しても通じなかったとショックを受けていたが,それくらい古くては当然だ(「戦後」が第二次世界大戦後であるとすら分からない学生が多いのである!)。
 三浦は妻に多額の保険金をかけたうえで,共に渡航し,そしてロス事件が起こった。何者かに妻は撃たれて死亡し,側にいた三浦は負傷したのだ。三浦は狙撃の実行犯とともに逮捕され起訴されたが,一審は「実行犯無罪,三浦有罪(無期懲役)」。実行犯なくしての共謀犯はないから,これって無理無理の有罪だよねと言い合ったものだ。そうしたら上級審において,検察が共謀者を「氏名不詳者」としたのを,裁判所は無罪と判断した。日本のまっとうな法律家的感覚としては,結論自体は仕方がないと思う。もちろん状況証拠は満載だから,自白さえあれば問題なく有罪であった。彼はその以前,女優と共謀して妻を殺害しようとしたし(これは有罪となった),極めてクロであったが,うまく逃げおおせたのである。

 この事件,当然ながら犯罪地の米国にも管轄がある。最初から米国が裁いていれば,英米法系は証拠の認定が大陸法系と違って大おおざっぱだし,(司法取引せずに無罪を争う以上)陪審ではあるし,有罪となり,最高刑の死刑に処せられていたであろう。だが,三浦にとってラッキーなことには日本が管轄を取った。原則,政治犯は引き渡さない,自国民は引き渡さないのである(亡命者フジモリが急に日本人だと言い出したのは記憶に新しい)。国にはそれぞれ主権があり,捜査機関は他国に赴いてまで逮捕はできないから,三浦が以後米国に行きさえしなければ今回の逮捕劇もありえなかった。一事不再理はあくまで主権の同じ国の中での話だし,米国では第一級殺人の時効がないことも,100年に一度の天才的犯罪者(との評があった)はよく知っていたはずだが,加齢とともに勘が鈍くなっていたのであろう。ともあれ,この後の展開が非常に楽しみである。

 さて,法相。またまたやってくれました。鹿児島の公職選挙法無罪事件は「冤罪」ではないと,公式の場で発言したのである。彼の理解では,冤罪とは「真犯人が出てきた場合」だそうだ!? たしかに殺人容疑であれば犯罪による死体があり,犯人は誰か必ずいるが,買収容疑の場合には犯罪そのものがでっち上げの場合もある。冤罪とは真実やっていない人が嫌疑を受けることであり,真犯人の登場云々とはそもそも無関係である(真犯人が出てくれば冤罪であることがすぐさま明らかになるだけ)。この点,某党首(弁護士)の「無罪だから冤罪」との発言も誤りだ。無実は実体的な問題だが,無罪は有罪立証(合理的な疑いを容れない程度の証明)が出来なかった場合であり,無罪の中に無実があるという部分集合の関係に立つ。
 なぜ罷免要求が出ないの? と聞くと,何のことはない,民主党幹事長が実兄であるからであるらしい。
ああ。

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