徳勝龍優勝!に思うこと

令和2年初場所は実に面白い場所だった。まずは序盤、白鵬が遠藤に敗れ、続いて妙義龍に敗れて、早々と休場した。鶴竜も休場して、序盤で早や横綱土俵入りがなくなった。このままどうなることかと思っていたところに、平幕正代らが大健闘し、非常に面白い場所となった。

正代は熊本出身。正代は熊本にある姓で、祖母は嘘のようだが、正代正代と言う。東京農大2年で学生横綱になったものの卒業を優先し、前相撲からのスタートとなったが、体格に恵まれて地力があり、瞬く間に関脇に上り詰めた。だが、そこまで。かねて、顎が上がり体が反る姿勢が指摘されていて、転落。そのままかと思われていたが、先場所千秋楽、新小結朝乃山に負けることなく立派に11勝を挙げて(朝乃山と同じ準優勝)、今場所は前頭4枚目に上がっていた。今場所、珍しく連勝して1敗(豪栄道に惜しくも敗れた)のところ、貴景勝との1敗同士対決をまずは制した(貴景勝2敗)。14日目は幕尻でこれも1敗だった徳勝龍との対決で、当然勝つはずが勝負を急いだと見え、敗れた(正代2敗)。そして、昨日千秋楽。勝ち越しのかかった実力者御嶽海(前頭2枚目)に難なく勝ち、結びの一番を待つ。徳勝龍対貴景勝。大関が難なく勝って正代対徳勝龍の優勝決定戦が行われると思っていたが、徳勝龍、四つに組んで、堂々と勝ち切った。14勝1敗、堂々の優勝である。

徳勝龍は木瀬部屋(この部屋は難しい四股名が多い。徳勝龍の本名は青木誠である)。近畿大卒(名門相撲部で朝乃山と同じ)の33歳。同年には稀勢の里、豪栄道、琴奨菊、妙義龍、栃煌山その他、きら星のごとく名力士が並ぶ。稀勢の里は引退、豪栄道は関脇に転落、琴奨菊も大関から転落し、妙義龍・栃煌山共々幕内に残ってはいるという状態だ。であるのに、徳勝龍は「もう33歳ではなく、まだ33歳」と言う。なんと素晴らしいことだろうか。インタビューもユーモアと人間性に溢れ、相撲ファンをうんと増やしたことと思う。このところ初場所は初優勝が続いていて、昨年は玉鷲だった。34歳。ただしその後は残念ながら落ちてきたので、徳勝龍には是非とも頑張ってほしいと願っている。

今場所は良かったねという声をあちこちで聞く。平幕の活躍もさることながら、本心は「白鵬がいなくて」。毎度毎度の張り手かち上げ。立ち会いは決して相手に合わせず、常に自分の立ち会いでやる(きまじめな稀勢の里は何度泣かされたことだろう)。どれほどの苦言が呈されても、「反則ではないでしょ」とどこ吹く風。勝てばいい、金が儲かればよいとの姿勢と、相撲という神事は相容れない。それがかつて、双葉山に倣って「後の先」などとうそぶいていたのだから、よけいに腹が立つ。横綱に上がってくる力士がないのをよいことに、まさにやりたい放題だ。相撲協会も横綱審議会も、とにかく情けない。

朝乃山は10勝を死守したので、先場所の11勝と合わせて、来場所12勝を上げれば、三役で直近33勝の基準を満たす。頑張って夏場所には大関に昇進してほしい。北勝富士と正代、遠藤は来場所が三役の起点となるので、大関になれるよう是非とも精進してほしい。反対に心配なのは、貴景勝である。14日朝乃山、千秋楽徳勝龍に敗れたのは、いずれも相手に組まれたことによる。組まれても投げを打ったりはするのだが、なかなかうまくいかない。とにかく組まれると弱いのだ。彼のスタイルは、強烈な突き押しで相手を押し出す、突き出す。だが、いつもそううまくはいかないのだから、四つ相撲も取れないとやはりこれ以上は無理であろう。日本人には珍しいメンタルの強さに期待している大関なだけに、なんとかその壁を越えてほしいと願っている。

来場所、大関は貴景勝ひとりになる。大相撲は横綱がいなくても成り立つが、大関は必須である。よって、30年ぶりだかに、横綱大関の登場となるらしい。来場所、三役に昇進するのは北勝富士、遠藤、正代である。豪栄道が関脇になり朝乃山と二人だと、小結が3人。大関が空位になることもあり、ここは是非、正代を再度関脇に上げてほしいと思う。ともあれ、劇的だった初場所が終わり、自他ともに認めるスー女の私としては、3月場所が楽しみだ。

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