高校野球に心を洗われる

猛暑が一段落し、自宅はもちろん事務所も冷房不要である。爽やかな風が吹く。夏期休暇明けの今朝は8時半過ぎに事務所に来て、とりあえずの雑務を済ませた。このあと10時からは高校野球準決勝、金足農業対日大三校だ。例年特段の興味のない高校野球だが、今夏は違う。公立で全員地元の秋田県出身、文字通り選手の交代もなく9人野球を続けてきた金足農業高校が、奇跡の大躍進を遂げている故である。

吉田輝星(こうせい)投手。150キロの本格派右腕である。変化球の球種も多く威力があり、すでに4試合連続2桁の奪三振だ。いわゆるフィールディングも抜群で、目の前に来たバントフライをあえて捕らずにワンバウンドさせて素手で取り、1・2塁併殺。スクイズを素早く取って後ろ手に3塁を刺すなど、咄嗟の判断がまさに「半端ない」。ピンチで焦ることなく、余裕の笑顔だ。自分たちは絶対に負けないと、自分及びメンバーを信じ切っている様子が伝わってくる。

野球は9人のものである。全員地元、そして同じ農業者。みなが勉強もし、野球に励み、そして当然のように家の手伝いをする。飼っている豚や鶏に餌をやり(学校でも飼っていて、準々決勝近江戦では子豚が9匹生まれたそうだ)鋤や鍬を持つその手に、グラブとバットを持ち替える。なんと素晴らしいことだろう! 世の中の多くの高校生を見れば、サラリーマン家庭では手伝いをすることもあまりないし、おそらくは学校と塾で一日が終わるのではないか。それに加えて、多少のお稽古事やスポーツ…。金足農業の真摯な姿は、古き良き時代の若者像を浮かび上がらせる。

公立高校がベスト4に残ることもベスト8に残ることも、そもそも地方大会で優勝することも珍しくなって、久しい。高校野球の名門校はおしなべて私立高校だ。金に飽かせて全国の有望中学生をスカウトしてきては、強くなって当然であろうと思う。ドラフト1位候補は、吉田投手以外、大阪桐蔭のマルチ根尾と野手藤原、報徳学園のショート小園だそうだ。中で根尾選手に関心がある。両親は岐阜で診療所を開き、兄は現役で岐阜大学医学部に入り、本人は中学時代スキー回転で日本一に輝き生徒会長もやり、成績はオール5だそうだ。素晴らしい身体能力の持ち主で、投手・ショート・野手と何でもこなせるし、打撃も打率4割を超え、本塁打も打つ。野球だけやってきた人よりもマルチな人が楽しみだ。それはどのスポーツにも、またどの職種にも言えることだろう。魅せる高校生の存在によって、記念すべき100回大会は断然面白くなっている。

そろそろ10時。テレビをつけて、そしてもちろん仕事に励む。彼らの真摯な姿は、見る者の心を洗い、感動とエネルギーを与えてくれる。感謝である。

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