皇室典範改正論議

  皇室典範改正論議が、ここにきてにわかに、かしましい。
  秋篠宮誕生来40年、皇室では女子の誕生が続く。皇太子も秋篠宮もおられるので、30年やそこらはまだ大丈夫だが、将来は女性天皇が必至である。当世は男女平等が当たり前だし、ヨーロッパ各国でも女王は当たり前なのに、いまだに女性天皇が駄目というのではいかにも時代遅れだし、実際問題として女子しかいないのだ──。昨年来の有識者会議を経て、首相は施政方針演説において、今通常国会での改正を宣言した。
  だが、そう簡単には通過しないであろう。法案の性質上、国会議員各人の信条に重きが置かれ、党議拘束はかけられまい。だがしかし、党議拘束をかけなければ造反者が大量に出て、法案の通過は覚束ない。無理に通そうとすれば、政局になって、政権は9月までもたないかもしれない。法案の取り仕切り役はポスト小泉の呼び声高い安倍内閣官房長官。この舵取りが試金石になるのは間違いないのである。

 改正反対論者の多くも、愛子さんが天皇になることまでは反対していないようだ。皇室典範第1条「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」の「男子」を「子」に変えて、女性天皇を認めるのはOKなのだ。日本にもかつて女性天皇が、推古天皇を含め8人いた。だが、どれもが中継ぎのような形で、その子孫が天皇になったことはない。つまり、女性天皇はいいが女系天皇は駄目だというのである。

  男の遺伝子はXY、女はXX。男系論者が、Y遺伝子の継承を主張する生物学的な意義は、私にはよく分からないのだが、ヨーロッパ各国はすでに男系女系を問うていない(エリザベス女王の子息がチャールズ皇太子だ)。だから、女系天皇が駄目だというのは、理論の問題ではなく、日本の皇室は古来男系で万世一系、連綿と続いてきたことが世界に例がなく値打ちなのであり、だからこそ決して変えてはならないということではないか。

 だが戦後、早晩、女性天皇ないし女系天皇が問題になるのは必至であった。

  かつて10を超えた宮家が皇室を離れ、大正天皇の3皇子以降に限られる小サイズでは、皇室に限らずどの家でも、血筋が絶やさず続くのこそがよほどの幸運である。
  徳川家を見ればいい。多くの側室がいて(将軍正室の子は三代家光だけである)、それでも徳川本家だけでは続かず、8代吉宗は御三家の一つ、紀伊家から迎えた。血統保存のため、初代家康が設けた御三家に、8代以後御三卿が加わった。現代は、正妻のみ、少子の時代である。まして皇室では養子が認められていない(皇室典範第9条)。
  ヨーロッパの各王家は、他国から来たり、あるいは内紛で、現王朝を倒して新王朝を作ってきたのであり、そもそも「万世一系」ではない。世界で最も長い歴史を誇る王家を、国として、今後どういう形で保存していくのか。日本の長い歴史に絡む由々しき事態を、ゆめ簡単に決めてはならないと思う。
 
  歌会始で御夫妻ともども「こうのとり」を題材に詠まれ、もしかしてと噂されていた秋篠宮妃、はたしてご懐妊の報道である。国民の多くが男子誕生を願っているだろうが、ともあれ皇位継承問題は、将来いずれ、真剣な議論を避けて通れないと思うのだ。
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