トランプ大統領誕生に思うこと

劇的な投票日から,早や20日が経過した。この間に政権移行チームが発足し,安倍首相においては世界中で初の会談を実現させた。市場が予期した円高・株安はなぜだか起こっていないが,これは嵐の前の静けさ,なのだろうか。もちろんアメリカ本土ではあちこちで,トランプ反対のデモが続いているのではあるが。

本当に,トランプ大統領は実現するのだろうか? トランプ候補は,選挙人獲得数でこそ過半数の270人を超えたが,得票数はヒラリーのほうが100万票上回っていた。実は選挙の集計はまだ終わっておらず(!?)最終的には200万票近く上回る見込みだという。得票数で勝って選挙人数で負けたのは,16年前,まさにビル・クリントン氏副大統領だったゴア氏が共和党ジョージ・ブッシュ氏に敗北した時がそうだった。フロリダ州の集計疑惑は裁判所でも争われたが,結局ゴア氏は敗北を認めた。かの9.11事件は,大統領がキリスト教原理主義者のブッシュ氏だったからこそ起きたとも言われ,選挙戦がアメリカのみならず世界の運命を大きく変えたことになる。

今回,そもそもの集計に不正があったとの報道があったが,敗北宣言を出しているヒラリーではなく第3の党が資金を大幅に募って,再集計を申し立てたという。ウィスコンシン,ペンシルベニア,ミシガン…すべてトランプが選挙人を丸取りした大票田である。再集計の結果,もしヒラリー票が1票でも多いとなったら,トランプ勝利は覆ることになろう。となると今度はトランプ派が黙って引き下がるわけはないから,アメリカではまたまた大きな分断が起きることになる。

加えて,12月19日の本選挙において,選挙人が寝返るというシナリオも消えない。そもそもヒラリーのほうが得票数が多いのに選挙制度がおかしいと,各選挙人が自らの良心にのっとって,トランプと書くべきなのにヒラリーと書いたり,あるいは白紙で出したら,どうなるだろうか。当該結果は下院に持ち込まれるらしく,下院は共和党優勢なので,それでもやっぱりトランプを選ぶだろうか。いや,共和党内でもトランプは異端だから,ヒラリーになるのだろうか。選挙後にもなおこれほどの不安定さを残す大統領選も珍しいことである。

個人的にはトランプ大統領がもし実現しないことになれば,大変に喜ばしいことだと思っている。政権移行チームに家族を3人も入れたり,自らの住居に首相を招聘して家族が同席したり,その公私混同は発展途上国の独裁者さながらである。トランプ氏には公務政務の経験が皆無で,ビジネス,つまりはお金儲けしかやってこなかった。その方法も家族ビジネスだから,どんな時にも信頼の出来る家族を入れるのは彼にとっては当然なのだろう。国政はもちろん,外交や防衛といった国際政治のイロハをまるで知らない傍若無人のビジネスマン,その人に核兵器のボタンを委ねるのは,とてもとてもこわいことである。

民主主義は常に衆愚政治に陥る危険のある政治形態である。つまりは,教養のある人もない人も,税金を納めている人もいない人も,国を考える人も考えない人も,自分のことしか考えない人もそうでない人も,すべてが平等に一票である。選挙戦中,何がどうあれ結局は良識ある人はヒラリーに入れるからトランプ当選なんてありえないよねと言い合っていたのが,脆くも崩れ去った。職を奪われその日の生活にも事欠く白人層の不満の声をトランプ氏はきれいに掬い上げたのだと言われている。ヒラリーが格調高い敗北宣言で指摘したように,この選挙は,アメリカの分断が想像以上に深いことを露呈した。誰が大統領であろうとも,それを修復していくことは至難の業である。

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