トランプ騒動その2

入国制限大統領令について、アメリカでも多くの人が反対していると思っていたが、そんなこともないらしい。ロイター通信による1200人のアンケート結果では、賛成が反対をやや上回っているのである! ことに共和党支持者では圧倒的に賛成が多く、反対派は民主党支持者に圧倒的に多い。基本的に共和党は保守派であり、民主党はリベラル派である。つまり、例えば中絶や同性婚に対して、共和党は反対、民主党は賛成ということになる。

裁判所で違憲が確定すれば無効になるが、最終的な判断は連邦最高裁が行う。判事9名は大統領の指名により上院が承認する。時の政府の意向から独立させるため、連邦判事は終身である。今現在、保守3人(父ブッシュ指名1人、子ブッシュ子2名)、リベラル4人(オバマとクリントン指名各2)、中道保守1名(レーガン指名)。1名の欠員(昨年死亡)はレーガン指名の保守派だったが、オバマが指名したリベラル候補を議会が承認せず空席である。この度トランプが指名した保守候補について民主党はその承認に抵抗する構えだというが、共和党が多数なので、どこまで頑張れるだろうか。

同性婚は、中道保守のケネディ判事が賛成に回った結果、5対4の際どい結果で可決された。問題は、ケネディ氏は80歳、またリベラル判事4名のうち2名が78歳と83歳という高齢であることだ。つまり、トランプ在任中に後任選びになる可能性が高く、その場合保守派判事が指名されるのは確実であり、そのため国の判断が大きく異なってくるだろうということである(片や保守議員は3人ともまだ60代のうえ、今回の候補はなんと49歳である!)。

確かに世の中にはいろいろな考え方の人がいる。自国の安全を何が何でも優越させるのであれば、しょせんは外国人の入国の権利など大したことはないのであろう。しかし、アメリカはそもそもが移民国家である。今いるアメリカ人もその先祖は移民であり、トランプの妻は本人が移民である。多様な人種、宗教、バックグラウンドの人たちを受け入れてきたがこそアメリカは発展してきたし、世界のリーダーにもなれたのである。

そのアメリカが完全な内向きとなり、加えて、種々の誤った認識の下に外交や経済政策を強引に進めていこうとしている。トランプ氏はこの度初めて、日本を中国同様の為替操作国として名指ししたが、それもまた完全に誤った認識である。荷が重いのはよく分かるが、日本政府にはまずはその強固な誤解を解いてもらうよう努力をしてほしいと願う。

カテゴリー: 最近思うこと | トランプ騒動その2 はコメントを受け付けていません

イスラム国民の入国禁止なんて、ありえない!

今月20日に就任したトランプの就任演説、要はアメリカ製品を買ってアメリカ人を雇え、と徹頭徹尾アメリカ第一のアジテーションで、従来の大統領就任演説に見られた格調や品位がかけらもなかった。悪い予感がしたが、わずか10日間で悪夢が次々と現実になっている。

そもそも彼は経済のイロハを分かっていないのではないか。ビジネスマンと言っても、国際的な製造業などに携わり、需要と供給、株式を理解して売上げを伸ばし、M&Aで会社を大きくしてきたのではなく、ただ国内の不動産を転がして金を儲け、破産を繰り返して損切りしていったのだから、経済など知らなくてもいいのだろう。貿易をただ二国間の数字でしか見ないのも誤りなら、輸入品に多額の関税をかける保護主義は結局自らの首を絞めることになるのである。例えば、アメリカの自動車産業。数多くの部品の多くは労働力の安いメキシコで製造されてアメリカに入ってくる。それに多額の関税をかければアメリカ製自動車の価格は当然に高くなり、競争に勝てないし、アメリカ国民も高い代金を払うことになる。といって部品をアメリカで製造すれば、労働力が高いのでこれまた価格に跳ね返る。過度の保護主義は国を滅ぼす。例えば、ナポレオンの失敗の原因に、大陸封鎖令を出してイギリスとの貿易禁止をかけたことで、農業国であるロシアやポルトガルなどが大損害を被り、イギリスと同盟を結ぶ事態になったこともその一例である。

自由貿易はノーと決めつけているから、即刻TPPも廃止した。それに代表されるように、オバマ氏のやってきたことすべてを帳消しにするらしい。テロを防ぐために(?)「イスラム教徒の入国禁止」を選挙期間中うたっていたが、これまた即刻大統領令を発布したのには驚いた。いわく、シリア難民の受け入れ停止、他の国の難民も原則120日間受け入れ停止、加えてなんと、テロの懸念がある7か国についてはビザを持つ一般市民の入国を90日間停止するとした。対象国はイラク、イラン、リビア、ソマリア、イエメン、スーダン、シリア。

アメリカのテロは、ボストンマラソンテロでも知られるようにアメリカで生まれ育った自国民によるものが多数である。当該7か国出身のテロリストはいないし、9.11に関与したサウジアラビアはなぜか外れている。もちろんテロリストないし犯罪者の入国を拒否するのはどの国でも当然のことだが、国籍故に、宗教故に一律入国を拒否するのは、まさしく人種差別、宗教差別であり、アメリカの憲法に照らしても、また近代法の理念に照らしても、決して許されることではない。馬鹿げた大統領令に反対するアメリカ市民の大規模なデモが各地で起こり、15州の司法長官が違憲だとの声明を発表し、まずはワシントン州が連邦裁判所に提訴したという。提訴は続くだろう。健全なアメリカの姿に、少し、いや大いに、ほっとさせられる。トランプさん、あなたは学校で学ばなかったのですか。アメリカは法治国家であり、司法権が他の2権に優越することを。誰であれ憲法や法に服さねばならず、それは大統領でも例外ではないことを。法廷で違憲が確定すれば、大統領令は無効になる(もっとも裁判は時間がかかるので、停止期間内に確定するとは思えないが)。もちろん議会が大統領令を無効とする法律を通してくれてもよいのだが、議会は共和党が優勢なので望めないだろう。

事態がここに至っても、トランプ大統領は自説を曲げず、マスコミ批判を続けている。違憲の疑いがあると率直に述べた連邦司法長官代行の女性を、オバマが任命したのだと即刻首にもした。選挙戦では過激でも、いざ就任すれば現実主義者として穏便になるであろうとの楽観的な読みは、見事に外れた。著しくアメリカの国益をも損なっているので、議会で弾劾されればよいと思うが、共和党が多数を占めるし、これまで弾劾された大統領はいないことを見ても、そう簡単には行かないであろう。

メルケル首相やオランド大統領は、直接電話でトランプに苦言を呈したという。自由、平等、博愛は人類普遍の真理なのだから、当然の行為である。ただ日本政府は、アメリカの内政だからと何も言っていない。安全保障を人質に取られて、言いたくても言えないのかもしれないが、なんとも寂しいことである。

カテゴリー: 最近思うこと | イスラム国民の入国禁止なんて、ありえない! はコメントを受け付けていません

『同居する90歳の叔母の遺言をどのように書けば・・・』

自由民主党月刊女性誌「りぶる2月号」

カテゴリー: 執筆 | 『同居する90歳の叔母の遺言をどのように書けば・・・』 はコメントを受け付けていません

稀勢の里関、本当におめでとう!

稀勢の里、この初場所、見事に優勝しました! 14勝1敗という立派な成績。途中琴奨菊に負けただけで、千秋楽は白鵬にも見事に逆転勝ち(土俵際のすくい投げ!)、初優勝かつ横綱昇進を自らの手で勝ち取りました。14日目、結びの一番で白鵬が貴ノ岩に負けたと支度部屋で付き人から聞かされ、稀勢の里の右目に流れた一筋の涙。なんともいえず胸に迫るものがありました。

12年前大相撲に通うようになったとき、幕内には稀勢の里18歳、安馬19歳の2人がいました(もちろん白鵬もいました)。安馬は100キロにも満たない痩せ型で、いくら才能がありかつ努力しても大関止まりだよねと思っていましたが、あれよあれよと言ううちに上り詰め、全勝すら続け、そして見事横綱に昇進しました。日馬富士です。片や体格からしてもすぐにでも横綱になるよねと期待していた稀勢の里は足踏みを続け、ようやく5年前に大関に昇進、以後何度も優勝争いに絡みながら準優勝12回を重ねるのみ、下位に取りこぼしたり、白鵬との直接対決に敗れたりして、優勝には手が届きませんでした。挙げ句は、昨年初場所琴奨菊が先に優勝(14勝1敗)、9月場所では豪栄道がこれまた先に優勝(全勝)、照ノ富士はすでに優勝しているので、勝率では圧倒的に勝っている稀勢の里だけが全大関中優勝経験がないということになりました。

能力ではなく、努力でもなく、メンタル。彼のその弱さだけはどうしようもないと、皆が半ば諦めながら、それでも諦めがつかず期待を続け、そして裏切られ続けながらのこの5年間でした。稀勢の里はようやくメンタルの強さも身につけ、期待を裏切らない男に成長しました。一番苦しんだのは本人です。どれほど悩み、苦しくて、寝られない日もあったことでしょう。それら多難の日々を乗り越えて、今の栄光がある。まさに金太郎のような、「気は優しくて力持ち」。曲がったことは嫌い、真っ向から正々堂々と勝負する、誰にも負けない稽古量、まさに力士の鏡のような力士がようやく誕生しました。

稀勢の里は、怪我をしない。休場もわずかに1日だけ。包帯のない綺麗な体で土俵に立っています。相撲の神様はもう十二分に彼を強く鍛えたので、今後はきっとずっとほほえんでいてくれるでしょう。努力した者こそが報われる。正直者が勝つ。稀勢の里は私を含め数え切れない多くの人たちに希望を与えてくれました。これから多くの若い力士たちが稀勢の里を手本にして地道に精進を続けることでしょう。本当に、おめでとう。稀勢の里の上にますます幸多きことを心より祈ります。

カテゴリー: 最近思うこと | 稀勢の里関、本当におめでとう! はコメントを受け付けていません

『空き地に賃貸住宅を建てろと不動産屋がすすめてくるのですが・・・』

自由民主党月刊女性誌「りぶる1月号」

カテゴリー: 執筆 | 『空き地に賃貸住宅を建てろと不動産屋がすすめてくるのですが・・・』 はコメントを受け付けていません