マリスンスキーオペラ『トゥーランドット』観劇、デモ行進目撃

 昨日午後2時?、NHKホールでプッチーニの『トゥーランドット』を観劇した。荒川静香がこの中の有名なアリア「誰も寝てはならぬ」で金メダルを取り、一躍有名になったオペラである。DVDは持っているが、生で観たのは昨日が初めてだ。

 ストーリーは単純である。先祖の呪いによって氷の心を持った絶世の美女、トゥーランドットが求婚者に3つの謎をかけ、解けない者の首を跳ね続けていた。そこに現れた異国の王子カラフは果敢に挑戦、見事、謎解きに成功する。ここで話は終わらない。姫は合法的に自分のものになったが、姫の真実の愛が欲しいカラフは、夜明けまでに自分の名前を当てたら自分は死ぬと宣言をする。そこに、たまたま北京で再会していた父親と女奴隷リューが引っ立てられ、名前を言えと拷問をかけられるのだ。王子を慕っていたリューは自ら死ぬ。その無償の愛に姫までもが目覚め、ハッピーエンドとなる…。

 このストーリーはよく考えると随所に不合理なところがあるのだが、昨日の公演は実に素晴らしく、これまで観たオペラの中で最高峰だった。指揮ワレリー・ゲルギエフの管弦は、歌に寄り添い、出しゃばらず、それでいてちゃんと自己主張をしていて、もうびっくりのし通しだった。役者も体格・声の質・技量・演技ともに粒が揃っていて(一人だけ上手くて目立つとか、一人下手なのがいるとかは困る)、感心した。タイトルロールは、ワーグナーを歌えるドラマティックソプラノ(重量感のあるソプラノ)の役なので、そもそも演じられる人が少なく、中でこのマリア・グレギーナは最高の歌手であるらしい。40代半ば、太めではあるが、圧倒的な声が素晴らしく、それ以上にリュー役のヒブラ・ゲルズマーワが情感のこもった素晴らしい声で泣かせてくれた。後で調べたら、チャイコフスキーコンクールで例外的なグランプリ(1位の上)を取った人であるらしい。舞台演出も色が綺麗で、よく統制が取れ、これぞ総合芸術だと感嘆した。

 最後のカーテンコールまで盛大な拍手を送り、余韻に浸りながら渋谷駅まで歩いていたら、デモ行進にばったり。100人規模くらいで結構大きく、こういうのはめったに出会わないので、びっくりした。時期的に打倒菅政権かと思っていたら、小沢支持のデモだったので、またまたびっくり。菅・仙石を糾弾、マスコミと司法に騙されるな、とプラカードに書いてある。

 家に戻って何人かにメールで知らせたら、一人が「そういうのはネチコンという。ネットユーザーのオフ会」と教えてくれた。オンラインと違って、生で集まるからオフ、だそうだ。ネットでは圧倒的に小沢支持だそうだ。とくに検察審査会への不信感が強いのだそうだ。そういえば、プラカードにもそう書いてあった。

 ネットといえば、エジプトの革命もネットで集合をかけたのである。チュニジアでの革命に触発された民衆の力が結集した。昨今新聞を読まない人たちが増えたが、テレビもつまらない番組ばかりやっているからだろう、もうあまり影響力を持たなくなってきた。あっという間に圧倒的にネット時代に突入した観がある。ただ、北朝鮮の民衆はラジオを含めて情報をまったく遮断されていて、真の意味で気の毒である。

 デモを見たとき、菅政権はもうもたないと実感した。解散か総辞職か。しかし、与党内部はもちろんのこと、野党にしてもそんな呑気な場合ではないだろうにと思える。選挙になって自民党に託すとしても、どんな政治をやってくれるのか、国民には見えない。党大会でもスローガンが打倒民主党、解散に持ち込む、だったので落胆した。批判と挙げ足取りからは何も生まれない。そうではなくて、自分たちに再度政権を委ねてくれたら、どんな国を作るのか、外交戦略はどうするのか、それを見せてほしいと国民は心から願っている。だが、どこもそれに答えてくれるところがなく、閉そく感が漂う。

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