執筆「出会いの季節,一期一会を大切に 調停委員の仕事から学んだこと」

 昨春家裁の調停委員になり、ほぼ1年が経った。
 家事調停といえば離婚と遺産分割だが、弁護士調停委員はもっぱら遺産分割に携わっている。離婚よりもはるかに法律的知識が必要だからであろう。
 調停は必ず男女ペアで臨み、また弁護士は一般と組むので、私の相棒は男性の一般調停委員である。公務員・教員・サラリーマンを退職された方が多く、皆とても熱心だ。
 調停委員の在り方を一言でいうと、「公平に当事者双方の言い分をよく聞くこと」である。そんな主張は法律的に認められないよとばかり、上から目線で説教していては、当事者がそっぽを向く。弁護士がついていない場合はよけいである。
「聞くこと」。これには大変な労力が要る。カウンセラーや精神科医も同様だが、親身になって聞かないといけないし、相づちを打ちすぎても、打たなさすぎてもよくない。話している途中に口を挟むのはよくないが、適当には挟まないと進まない。私などに務まるか、当初不安だったが、なんとかやれている。どころか、実に面白い。
 先般、先妻の子対後妻(弁護士なし!)の、感情的対立これぞ極まれりの案件が無事にまとまったときなど、どれほど嬉しかったか。日当はほぼボランティアに近いのだが。
 私が常に心がけているのは、笑顔でいることだ。特に、最初の瞬間。調停室に入ってくる相手の緊張を解きほぐす顔をし、声を出す。こちらにとってはいくつもある調停の一つにすぎなくても、多くの当事者にとっては人生にただ一度のことであろう。話をよく聞いてくれる、公平な調停委員だったかそうでなかったかで、裁判所へのイメージも大いに変わる。
 一期一会。4月、新入生も来る。どんな出会いも大事にしたい、と改めて思う。

自由民主党女性誌 『りぶる』

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