自民党女性局フランス研修旅行について思うこと

この度の大炎上で、自民党女性局が一躍有名になってしまい、片腹痛い。今を遡る20年少し前、自民党女性局長だったからである。いろいろあって続投したので、併せて2年2ヶ月の長期にわたった。全国津々浦々の支部に出かけて地方議員はじめ自民党支持者らと交流を持ったり、永田町党本部で研修をしたりして、有意義であったと思う。中には今でも親しく交遊のある、尊敬すべき(元)地方議員もいる。
そういう地味な活動しかしてこなかったので、今回38人の多人数でフランスに行ったとのこと、驚くばかりである。実は、女性局でフランスに行くということ自体は、この7月12日女性局の行事に請われて出席した際、行事の最後、松川るい局長が皆の前で「今度女性局でフランスに行くんですよ」と得意げに言ったので、知ってはいた。え、フランス?  6月末移民の少年(もちろんイスラム教徒)がパリで警察官に殺害された事件を発端に、移民らによる大暴動が発生し、警察隊との衝突が起こって、マクロン大統領はドイツ訪問を取りやめたし、外務省からも渡航注意が出ている。それなのにフランス? 大丈夫なのか、と思ったら、そんな大事なことには一言も触れず、「フランスは3歳児以上に義務教育を課しているので、それを見てきます。楽しみにしていてください」! この得意げな声音も耳にこびりついている。東大→外交官→参院議員。素晴らしいキャリアの彼女は、当然のように自信家である。

なんだ、そんなことを視察に行くのか? 子供は遊ばせるべきである。どうしても早くから英才教育をしたければ、自費でやればいいのである。そう思っている人のほうがずっと多いはずで、義務教育を6歳から3歳までに引き下げるべき、なんて思っている人が一体どれほどいるのか。自分一人の、せいぜいよく言って少数派もいいところである。子供を、その個性も立場も考えず一律に縛るのも害ならば、一体そのお金はどこから出るのか? またまた増税で賄うつもりか? 日本はますます借金肥大国になるだけである。政治家こそそれを考えないといけないのに、ポリシーもなく、国家の骨組みもなく、なんでもお金(税金)をつぎ込めばよい、というのはおよそ政治家ではありえない。

事実婚にも同じ効力を認めた結果として、出生率が2.0に上がったと喧伝していたフランスだが、何も言わなくなったと思ったら、またもや1.8に戻っていたのである。しかもその割合は移民が多いのだ。フランスは出生地主義を採っているので、アフリカなどからの移民労働者がフランスで出産すればすべてフランス国籍になる。そのためその割合を正確に出すのは難しいが、移民=貧困で格差問題が大きくなり、宗教的対立もあって、国を揺るがす由々しき事態に陥っているのは(今回の暴動事件の背景にもそれがある)、ある程度ものを知っている人は知っている。しかし未だに、欧米の先進国というだけで何でも見習おうとする人たちは官僚、外交官、政治家などいわゆるエリート層に多いと常々感じているところである。

民主主義は絶対的な善である…と考えるのは世界でごく一部に過ぎない。ロシアは敵、ウクライナが正しいというのはアメリカの考え方であり、インドはじめ世界の多くの国はその立場を取っていない。安全保障をアメリカに委ねている日本は、すべてにわたってアメリカ追随だが、世界の多くの国は呆れているはずである。キリスト教を共通の価値観にする欧米とは違い、日本は歴史も文化も異なるアジアの国である。その立ち位置の自覚もなく、ひたすらアメリカに追随するのは、きっとそれが考えなくてもよく、楽だからであろう。情けない。

という次第で、女性局が視察に行くという分野は全く関心のないことであったが、楽しみにしていてくださいと大言壮語するからには、また、女性局の行事として公的に行くのであれば、そのうちレポートが出るのだとばかり思っていた。公的出張に報告が伴うのは社会的常識のレベルである。ところがどっこい。正規の報告ではなくまさかの大炎上により、私はこの研修旅行の内実を知ることになった。まさに天網恢々疎にして漏らさず。もっとも誰がたれ込んだのでもない、自ら自爆したのである。

7月下旬に3泊5日、松川、今井絵理子、広瀬めぐみ、他男性の参院議員4人はファーストクラスで、他の地方議員その他はビジネスクラスだったのだろうか、松川議員が自らのSNSに得意げにアップした写真はエッフェル塔前でのポーズ取り写真その他であった(炎上後削除)。今井議員ももちろんアップしたので大炎上し、結果明らかになったのは、仕事?らしいことはわずかに6時間のみ、あとはシャンゼリゼ通りでのショッピングやセーヌ川下りの豪勢なフレンチ、5つ星ホテル滞在…なんだ、これは。完全な観光旅行ではないか。呆れることには、松川氏は小学生の次女同行、大使館職員に子守をさせ、おまけにレセプションなど公的な集まりはすべて欠席して今井副団長に任せていたという(子供との家族旅行を公費でやったわけである)。ここまでの公私混同はおよそ聞いたことがないが、元外交官の彼女にすれば外務省が国会議員のお世話をするのは仕事でしょうくらいに思っていたのであろう。勘違いも甚だしい。

大炎上して、女性局・青年局を束ねる組織運動本部長(小渕優子さん)が厳重注意をしたのに対して、「誤解を与えた」(であれば、誤解を解くよう説得しなければいけないが、誰も誤解などしていない)とか「軽率だった」とか、言葉はともかく、ふてぶてしい態度に終始し、全く反省などしていないことがテレビを見ている者にも如実に伝わり、気分が悪くなった。反省するような人であれば、もともと大炎上するような事態に至っていないのだ。すべてが結局のところ人間性の発露なのであり、子供を同行したことも含め、自分は絶対的に正しく、何一つ間違ったことはしていないと思っているはずである。

組織運動本部長からの注意だけでその上の幹事長が放っているのは、この日程で党が金を出すことを了解した故であり(子供同行も含めてか?)、ただまさかこんなに浮かれて遊びの写真を嬉しそうにアップして大問題になるとは予想もしていなかったであろうから、この騒動が早く収まることをただひたすら待っているのだと思われる。広瀬議員は松川・今井両氏と違い昨年の参院選での初当選であるが、やっぱり同じように浮かれて5つ星ホテルや豪華なフレンチなどをアップして炎上、地元の知事選の応援に戻れないらしい。自らも女性の参院議員をとの触れ込みで初当選し、今度は知事選にも女性を立てたというのに、逆風である。彼女に会ったことはないが、50代で弁護士をしていて、普通より知能も高いはずなのに、こんなことをして反感を買うとは思わなかったのか、不思議である。弁護士はじめ知っている周りの男性で同じことをしそうな人は思いつかないので、言いたくはないが、女性は駄目だよねとつい思ってしまう。女性の国会議員を3割にと、松川さんもずいぶん声を大にして言っていたが、量より質を。非常識な女性を増やすのは有害なだけである。

国民は今、諸物価は上がるし、賃金は上がらないし、先行きは見えないし、困っているのである。国民を代表するのが国会議員であり、それが国民の現状を知らず、知ろうともせず、自分は特権階級だからと常に上から目線であることをまざまざと見せつけられた。東大→官僚は、一般的に言って確かに優秀ではあるだろうが、優秀=頭が良い、ではない。本質的な頭の良さというのは教養があり、バランス感覚があり、相手の立場になって考えられる資質である。もちろん学歴も職業も問わないが、その基本は18歳までに家庭環境で培われるもので、それ以後には身につかないような気がしている。そうした本当に頭の良い人が政治家にならなければ、日本は欧米に尻尾を振り追随するばかりで、自らの立ち位置も分からず、後退する一方ではないか。そうしたことを思わされた「事件」であった。

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