葉梨元法務大臣発言に思うこと

個人的な集まりでも話題に上るほど、有名になってしまった。でなければこの方のことを知らない人のほうがずっと多かったが、これで全国版になってしまった。とはいえ次から次にいろいろなことが起こるので、ほぼすぐに忘れられるだろうけれど(笑)。

茨城とはかつてご縁があり、結構な回数伺っていて、同じテーブルになったことも何度かある。東大法学部→警察キャリア→葉梨代議士の娘婿になり選挙区を継いだ…。エリートだが物腰の柔らかい人だと感じていたが、今回の発言を聞いていると、上辺に騙されていたのだろう。ただの失言ではなく、根本的な人間性に根ざした発言であり、本人が根っからそう思っていたことは間違いないからである。いわく、法務大臣とは朝死刑執行のハンコを押して昼にニュースになるだけの地味な役職であると。一回だけではなく何度か言っていたらしい。

死刑執行は人ひとりの命を国家権力で強制的に奪うものであり、故に、刑罰の執行指揮は検察官で足りるものを、別格に法務大臣の命令によるとされているのである(刑事訴訟法475条)。判決確定の日から6ヶ月以内にしなければならず、執行はその5日以内にしなければならない(476条)。そもそも朝ハンコを押してなぜ昼のニュースになるのだ…!?死刑執行は午前中と決まっているのだが、法務大臣の命令が拘置所に届き、職員が執行するのはどれほど早くても翌日である(そんなにすぐやるわけはない)。もちろんニュースになるのはその後である。この人はそもそも法務大臣になって3ヶ月であり、まだ一度も命令をしたことがないのだが、現場の職員がどれほどの苦痛を味わいながら死刑執行に臨んでいるのか、少しでも想像力があれば分かるだろう。知性と教養の欠如はいかんともしがたいレベルであり、こんな人間の下ではとうてい働けない。更迭は当然過ぎるほど当然である。

加えて、世界の潮流は死刑廃止であり、未だ死刑を存置している日本がアムネスティはじめあちこちからどれだけ非難の的になっているのか、知らないのであろうか。そのトップが死刑執行を軽く扱っていることが、どれほどの波紋を巻き起こすか、これまた少しの知的レベルがあれば足りることだ。本当に情けなさ過ぎて、洒落でなく「話にならない」。おまけに「法務大臣は金にも票にもならない」を何度も発言していた。こちらは本当のことなので撤回しないと言い張っていたが、これも結局は撤回した。きっとご本人は何が悪かったのか、分からないままであろう。撤回しても発言がなかったことにはならないし、傲慢な人間性かつ貧弱な知性という厳然たる事実は残ったままである。

最近失言が多すぎませんか?と言う人がいるが、失言というようなレベルの問題ではなく、そもそもが程度の悪い政治家が多すぎるのである。発言は表に出てきたものであり、それを発出しているのは人間である。一見まともそうなことを言っていたとしても、真意がどうか、どこまでの意味を込めているのか(それはその人の人間性や知性によって大きく異なる)は、分からない。

当選6回。待望の初入閣が出来たというのに、それを謙虚に受け止めるどころか、不満たらたらだったようだ。金と票が見込める大臣(経済産業大臣?厚生労働大臣?)が希望だったし、自分はその資格があったのに軽量大臣にさせられたと思っているのだろうか(たぶんそうなのだろう)。ずいぶん厚かましい話だが、これでもう2度目の入閣はない。どころか、1度落選したことがあるが、今度こそ落選するのではないか。選挙民もちゃんと見ている。政治家は国民の代表であるから、普通の人より上の人になって頂きたい。尊敬どころか軽蔑に足る人は不要である。やはり中選挙区に戻さないと、どんどんと政治家の質は落ちていくと実感させられた案件であった。

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