素晴らしいオリンピックでした! とくに女子バスケット銀メダル

開催に反対していた人のほうが多かったが、いざやってみると、やって良かった、感動した、の声のほうがずっと多数になった。もちろんそれは、日本選手が金27個(アメリカ中国についで3番目である)という大活躍をしてくれたことが大きかった(「参加することに意義がある」は建前であり、本心でそう思っているわけでは決してない)。コロナ禍下での延期・開催という未曾有の試練の中、無事開催そして閉会まで滞りなく完遂された大会関係者・ボランティアの方たち、そして医療関係者に心から感謝する次第である。

柔道のメダルラッシュに続いて、私の一番好きな男子体操では、内村航平の後継者になると思われる橋本大輝選手19歳が、見事個人総合金、そして種目別鉄棒金の二冠に輝いた。彼は今春日本一になったばかり。以後試合毎に長足の進歩を見せてきたのであり、たぶん1年前の開催だったならばこの結果は難しかったであろう。4人全員オリンピック初出場、平均年齢22歳に満たない若いチームが団体銀となり(金ロシアとは僅かに0.1点差)、体操日本の将来は本当に明るいと思われる。女子も村上選手が床運動銅メダルを取り、これが日本の女子体操初の個人メダルとなった。指導者はたくさんいるのだから、今後どうか女子体操にも世界レベルで活躍できる選手が続いてほしいと願っている。

実は一番感動したのは、女子バスケットボールの躍進であった。下馬評でも把握しておらず、最近バレーボールもサッカーも全く駄目なので何も期待せず、たまたまテレビをつけたら、日本対フランスの準決勝戦だったのだ。まさか、準決勝なの!? ということは準々決勝戦を勝ち上がり(この競技、男女ともそんなことは一度もない)、メダルを狙える位置にいるのだ。見ていると、日本勢は小さいながらずっと走り回って、絶妙のパスワークをし、シュートをばんばん決め、なんとフランスをリードしている!? そして勝利。決勝戦は絶対女王アメリカと対戦だ。負けても銀。でもせっかくここまで来たのだ、是非金を取ってほしい…。

そして、8日(日)午前11時半?の試合。緊張しているのか、アメリカにうまく阻まれているのか、これまでの試合と違いシュートがあまり決まらず、一時は20点以上の大差をつけられたが、なんとか持ち直して最後は15点差であった。調べてみたら、オリンピック今回で7連覇のアメリカは、リオの時の決勝戦はスペインに、ロンドンの時はフランスに、いずれも30点差をつけている。日本、大健闘である。12人の平均身長は日本176センチ、アメリカは8センチ上回る184センチ(2メートル超えもいる)。ちなみにフランスは185センチであった。

団体球技の中でも、バスケットボールはサッカーと違い、高身長が必要とされる競技である(メッシは170センチしかない)。バレーボールもネット際を考えれば条件は同じだが、直接の身体的コンタクトがない分、バスケットボールよりうんと楽なはずである。そもそもバスケットボールが19世紀後半にアメリカで生まれ、しかしバスケットが出来ない人たちが一定数いて(高齢者や体が丈夫でない人などには無理である)その人たちのためにバレーボールがやはりアメリカで考案されたと聞く。二つとも今や世界中で最も広まっている団体球技であり、オリンピックに出場するためには各地での厳しい予選を勝ち抜いてこなければならない。バレーボールは「鬼の大松監督」の下、前回東京オリンピックで「東洋の魔女」が金メダルを取ったものの、そのあとはどうも注目度に比して、あまり成績が芳しくない。そして今回、あまり注目もされていなかったと思われるバスケットボールで、「東洋の魔女」が誕生したのである!

この誕生に力があったのは、トム・ホーバス監督であろう。アメリカ出身54歳、2メートルを超える彼は、日本の実業団でバスケット選手をして日本に長く、日本女性と結婚していて日本語も堪能である。普通であればどうやって身長の高い、身体能力の高い女子をスカウトしてくるかといった視点に限られそうなのを、彼は、日本人選手が厳しい練習を厭わず、規律正しいことに目をつけ、その長所を生かしたバスケットボールを作り上げていくのだ。4年前の就任時の挨拶、「夢・目標は東京オリンピックで米国に勝って金メダルを取ること」は当時笑っていた人が多かったと思うが、彼は本当にそう考えていたのである。スピードをもって、機敏に、常に走り回る。中に入ると身長差で拒まれがちなシュートより、外からの3点シュートを多く試みる。その成功率、脅威の40%。それは毎日のタフな練習によって全員が習得したものである。

まるでその動きはなでしこの澤選手のように、全体を俯瞰する目を持っている町田瑠唯(るい)選手は、162センチしかない。ポジションはポイントガード、司令塔だ。見もせずに素早く的確にボールをパスし、受けた選手が確実にシュートする。アシスト数は毎試合二桁を超え、準決勝戦では実に18アシスト、オリンピック最多記録をマークした(最後10分はベンチにひっこんでいたので、もしコートにいればもっと多くなったと思われる)。今回ベスト5に選出(アメリカ2,フランスとベルギー各1)。アメリカのプロバスケットチームから勧誘があるらしく、日本女子ではこれまで3人の先達がいるが、どれも長くは続いていない。町田が澤のように、世界にもまれてさらに成長し、日本のレベルを引き上げてくれるのが本当に楽しみだ。感動を与えてくれた皆さんに心から感謝である。

今日から甲子園が始まった。朝は早めに家を出るからよいけれど、お昼ちょっと外に出たら、倒れそうな熱暑だった。37度。体温より遙かに高くては命に危険が及びそうだ。甲子園球児たちは大丈夫かなと思う。オリンピックもそう思ったが、夏の戸外スポーツはもう止めたほうがよいのではないだろうか。

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