8月ももう終わり…証人買収罪初適用

5月の連休時帰省を諦めたが、お盆はちゃんと帰省した。お盆のど真ん中なのに、新幹線のすいていること!(奈良から東京に帰った知人いわく、深夜バスの客は自分一人だった!)交通機関はおしなべて大赤字であろう。観光施設その他も同じ。京都東山での結婚披露宴に参列してきたが、40度近い猛暑とはいえ、観光客らしい人はほぼ見かけなかった。

わずか4日の休みで9日間の夏期休暇だった。なにやかやとあったので休んだ感じはなかったが、17日から普通に働いている。通勤電車は相変わらず、すいている。猛暑も少し和らいで(とはいえクーラーはがんがんかけているので、クーラー病になりそうだ)、少なくとも夜は寝やすくなった。体調管理に気をつけながら、このあとの夏を乗り切りたい。

さて、本当に恥ずかしながら、証人買収罪なるものが3年前に新設されたことを、知らなかった。一体どこに? 「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」7条の2である。この法律自体は、国会議員になった翌年(平成11年)8月、徹夜国会で通過させた思い入れのある法律なので基本は知っているつもりである。そのあと何度も改正され、しかしこの罪は、この法律に盛り込まれながらも、ひとり組織犯罪に適用されるわけではないのである! 同条1項は「次に掲げる罪に係る自己又は他人の刑事事件に関し、証言をしないこと、若しくは虚偽の証言をすること…の報酬として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。」とあり、これが組織犯罪に係る場合には2項で加重されて「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金」になるという構成なのだ。そしてなんと、その初適用が、暴力団どころか、一般人どころか、国会議員の犯罪だったとは、ギャグみたいである。

IR(カジノを含む統合型リゾート)参入を巡って、中国関係企業から計1000万円弱の賄賂を受け取ったとして、逮捕起訴され、現在保釈中の秋元司衆院議員。せっかく保釈が取れたというのに、保釈条件もすっかり無視した挙げ句、人を介して贈賄者側に働きかけ、自分と会っていない(もちろんお金も渡していない)と嘘の証言をするよう頼んだというのである! その提供額はなんと2000万円!(本体額の倍以上あって、びっくり) 信じられない。そんなことをすれば、無罪を主張しているという本体の収賄罪を固めてしまうでしょ。贈賄者が黙ってその金額を受け取り、平気で偽証してくれると思っていたの?! まさか。そんな危ない橋、いくらお金を貰っても、こわくて誰も渡らないですよ。偽証は「3月以上10年以下の懲役」(刑法169条)、本体の贈賄(刑法198条。3年以下の懲役又は250万円以下の罰金)なんかよりもはるかに重い犯罪である。

案の定この人たちは、警察に相談をし、どうやらマスコミにも垂れ込まれて映像としても残っているらしいのである。買収を持ち掛けた秋元議員の知人3人が逮捕され(あと一人捜査中)、議員本人も逮捕されたが、またまた、自分は知らぬ存ぜぬと言い張っているらしい。そう言いさえすれば済むと、どうやら思っているらしいのだ。もしそうならば、仲に入った人たちがあなたに頼まれもしないのに、勝手に気を利かせて?よけいなことをやったわけですね?! 相手が議員に贈賄したとの供述がそもそもの嘘なのであれば、法廷でそれを丁寧に尋問して崩していけばいいのであって、別途お金を提供して嘘の証言を頼むのは筋違いにも程がある。2000万円は大金なので、その出所は明らかになるはずである。

今日は河井夫妻の初公判があり、やはり全面否認とのこと。金の授受自体は争えないので、もちろん趣旨否認である。買収目的ではなく、陣中見舞いその他の趣旨なのだと。前回の地方選挙の時は配っていないはずであり(自民党からそんな多額の資金も貰っていないし)状況からして買収目的だとしか考えられないが、だが被買収側は起訴されていないので(どころか立件もされていないという)、それが違法な司法取引であると弁護側は争い、なんと120人の証人がよばれるらしい。やはり100日裁判どころの話ではなかった。

ところで人間は、人の行動なり思考を推し量る際に、自分を基準にする傾向が大いにあると常々感じている。自分が腹が立つことならば、他の人も怒るだろうと思う。その推量が当たる時もあるが、外れる時も結構ある。あれ、腹立たないの? うん、こんなことで腹を立てていたら身がもたないよ…彼も悪気があったわけではないし…幸い大した被害もなくて軽く済んでよかったよ…フーン、寛容な人も世の中には多いのだと思ったりするのである(まあ確かに、私は短気だからね)。河井夫妻も秋元議員もきっと、自分と同じように他人を見ているのである。買収ではなく陣中見舞いで貰ったと、自分なら思う。そんな大金をくれるなら偽証くらい軽いものだと、自分なら思う。しかし残念ながら、それは世の中の常識に外れている。そんな人が国会議員になり、しかもまだ議席にあるのは、やはり大問題のように思われる。

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