凄まじい事件が次々と起こる

前代未聞である。19歳巡査が同じ交番の巡査部長を拳銃で殺害した。叱責されたからと、背後から拳銃で2発、即死である。発覚を遅らせるため交番に施錠してパトカーで逃走(その間に衝突事故を起こしたという)。脱走資金として50万円を下ろしている(キャッシュカードでの引き出し限度額だ)。もちろん逃げ切れるはずはなく、すぐに捕まり、拳銃も押収された。

何かひどいことを言われて咄嗟に激昂した際、たまたま近くに拳銃があったので大変な結果になってしまった、のではない。もちろんそれも決してあってはならないことなのだが、警官が人を殺害した事件はこのところいくつか耳にしているので、今回ほどのショックは受けなかったと思う。今回はまずもって動機が解せない。新米が職場の経験者に叱責を受けるのは当然であり、それが相手の殺害という強固な意思になるなど誰が考えよう。しかも一貫して計画的な犯行だったのである。とはいえ、拳銃がなければ傷害止まりだったはずであり、というよりも拳銃が使えるが故に容易に殺意に繋がったかもしれない。警察官の権力の象徴ともいえる拳銃を今後は一定の階級ないしは経験者以上には扱えないようにするといったことになるのかもしれない。

しかしいくらなんでもあまりにも幼稚な犯行である。殺人罪である。当然懲戒解雇になり、いくら未成年でも(まずは少年法が適用になる)長い間刑務所に行くことになる。親はどうなる? 家族や親類はどうなる? 地方だから親はじめ多くは近くに住んでいると思われる。そんな簡単なことにまるで思いが至らないというのは(正当防衛的な)咄嗟の犯行か、精神障害か、酒や薬物のせいか、くらいしか思いつかない。小学生でも分かるようなことを19歳の社会人、ましてや人のため社会のために就職した警官が分からないのでは、一体どうなるのか。暗澹たる気持ちにさせられる。

松山刑務所大井支所(造船作業場の開放施設である)の脱走受刑者(27歳)は、8日逃走後、15日の今日まで見つからない。向島(広島県尾道市)に潜伏していると見られるが、以前窃盗で逮捕されるときも1ヶ月ほど逃走していたらしく、慣れているのであろう。松山刑務所は四国にある4つの刑務所中、初犯者など最も犯罪性向の低い受刑者が収容される刑務所である(一番重いのは高知刑務所)。松山刑務所長が「(初めて刑務所に入ってくる者ばかりなので)良い処遇をしても良いと分かってくれない」と言っておられた。

この造船作業所にも行ったことがある。「塀のない刑務所」つまり開放施設は日本には数えるほどしかないが、まもなく社会に戻る前の仕上げ段階に、模範囚で逃亡のおそれもない者を選んで入れている。塀がないから逃亡しようと思えば出来るが、そんなことをしてもどうせ捕まるのは必定、その間に起こす新たな罪でまた服役することになり、再犯者の量刑は重くなるから、どう考えても損でしかないのだ。この受刑者も時間の問題で、いずれは捕まる。規律違反で叱責されて落ち込んでいたというが、そんなことが逃走の動機になるのか?(警官が叱責されて上司を殺害するくらいだから、ありえるのかもしれないが)ちなみに、逃走それ自体は「1年以下の懲役」と軽く(刑法97条)、これは人間が自由を求める本性を酌んだものと言われる(刑法を勉強すると必ず学ぶ「期待可能性」である)。逃走の際に器具を壊したり刑務官などに暴力や脅迫を加えたりすれば加重逃走罪(98条)として3月以上5年以下の懲役である。

広島県で14年ほど前、女子高校生が突然入ってきた男に滅多刺しされて殺害された事件の犯人がようやく捕まった。その際祖母も重傷を負い、妹は助けを求めに逃げたので似顔絵が作られた。この度、郷里の山口県で起こした暴行事件で取られた指紋とDNA鑑定がこの事件の犯人のものと一致した。使用した凶器も捨てずに自宅にあったという。男は素直に供述をしているというが、一体動機は何なのだろう。愛する娘は戻らないが、犯人が捕まってご両親・ご家族も少しだけほっとされたのではなかろうか。山口県警のみならず広島県警で長年この捜査に携わってこられた方々にも本当にお疲れ様でした、と申し上げたい。

いろいろな意味で関心のある刑事事件が続いて、永田町・霞ヶ関の喧噪がしばし脳裏から薄れていたのだが、財務省事務次官のセクハラがすごいレベルである。人格的な欠陥だろうと思うが、国のトップにある人たちのモラルがこれほど低いのでは、教育はどうなっているのだろうと思わざるをえない。

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