財務省の文書書き換えに思うこと

昨日は恒例の、参議院協会年次総会に出席してきた。参議院は衆議院と異なり、党派色がそれほど鮮明ではなく、党を超えて皆仲が良い。参議院議長・副議長はじめ各党党首(幹事長)が列席して祝辞を述べ、例年和気藹々の雰囲気なのだが、今回はやはり財務省の文書書き換え問題が話題の中心であった。

某党幹事長はかつて自民党の重鎮で、新任だった私たちも厳しくも温かい教えを請うたものだ。某省出身で、80歳を超えてもその舌鋒の鋭さは変わらない。いわく「官僚が劣化している。公文書の書き換えなど考えられない。いずれはばれるのだし、何でそんな馬鹿なことをするのか。かつて官僚は一流、政治は三流と言われたが、今は官僚も政治も三流だ」。そう、省庁のトップ財務省に限らず、官僚に限らず、政治家に限らず、日本全体に劣化が著しいのである。大蔵省はすでに20年前、ノーパンしゃぶしゃぶ接待等でその名をうんと下げている。

佐川前国税庁長官は、その前の財務省理財局長時代、自らの国会答弁に合わせるべく、近畿財務局から上がってくる決裁文書について、その書き直しを命じたようである。その数、14通?! 実質的に内容を書き換えたというより、交渉経緯などの部分(首相夫人や複数の政治家の名前が挙がる)を多数削除したらしく、詳細に見なければ、それが公文書変造なり虚偽公文書作成罪なりに当たるかどうかの断言は私にはできない。だがもし刑法上の犯罪には当たらないとしても、公務員が文書を書き換え、あまつさえ国会で虚偽答弁をすることがとうてい許されないのは当然である。国会を欺くことはすなわち国民を欺くこと。公僕たるものの立場を、財務省のトップですら知らないということなのだろうか。

一連の虚偽答弁は、あるいは、安倍首相のあのショッキングな答弁に起因するのかもしれない。いわく「私なり妻が何らかの関係があれば、首相はもちろん国会議員も辞めますよ」! それ故に森友問題は政局になり、官僚の「忖度」を誘発したのかもしれない。だが、理由はどうあれ虚偽答弁は許されない。本省局長にとって国会答弁は最も重要な仕事であり、野党からの際どい質問に対し、うまく説明をしてみせるのが腕の見せ所である。それを自らの答弁に現場の実務を合わせるようでは、本末転倒もよいところである。

森友問題は、近畿財務局が最初から地中のゴミを明らかにしたうえで入札案件にしていれば価格の問題は起きなかった。それを相手を決めた随意契約にしたうえゴミに関する説明が十分でなかったためにトラブル物件になってしまった。理財局長としては、その随意契約の過程で価格交渉があったことは明かしたうえで、プロセスは適正だったと説明すべきであった。価格交渉がなかったと虚偽答弁をしたうえ、それに合わせるように決裁文書の改ざんを指示し、その後は文書を破棄したなど(ありえない!)嘘の上塗りを繰り返したのはお粗末というほかはない。

朝日新聞へのリークは、現在捜査中の大阪地検特捜部だとも言われている。我々が厳粛に受け止めなければならない現実は、自らの良心に反して当の作業をさせられたは職員が長いうつ状態の末に自殺したという事実である。遺書が残されているという。遺族の怒りは相当なものだろう。佐川氏に人間としての良心がもし少しでも残っているのであれば、来る国会の証人喚問では何事も隠さずに真実を述べるべきである(嘘を述べると偽証罪になる)。

政治家の直接の指示はさすがになかったと思うのだが、財務省限りではなく、報告はしたのではなかろうか。指示はなかったにしろ、まったく知らなかったにしろ、部下の不祥事について上司が監督責任を負うのは組織の本質である。財務大臣にとっては、他家の不始末による出火が自分の家に飛び火して大火事になったわけだから、納得はいかないだろうが。

それにしても…北朝鮮問題その他、世界中に問題山積の折から、1年前からの森友問題を引きずり、国会の膨大な時間とエネルギーにこれに費やしているのはいかがなものか(参院協会でも「(いくら前代未聞の不祥事とはいえ)審議拒否はないだろう」の声は大きかった)。安倍首相を辞任に追い込んだとしても、自民党の誰が代わりにやっていけるだろうか。まして野党に政権担当能力がないことは、国民が身にしみて知っている。それ故に内閣支持率も自民党支持率もさほどは下がらない。消極的支持の国民が多いことはおそらくは不幸なことである。

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