民進党の一気解体に思うこと

事実はまさに、小説より奇なり。野党第1党があっという間に、新興の党に飲み込まれてしまった…! 歴史のある上場企業が、財産もノウハウもない駆け出しの会社に身売りして吸収合併されたようなものだ。「希望の党」がその代表者を若狭氏でも細野氏でもなく、小池氏にすると発表したとたん、民進党代表前原氏は「名を捨てて実を取る」と、自分を除く全員が希望の党で立候補するとして、両院議員総会に諮り、了承されたのである。

前原氏は先の代表戦で、今回の事態を公約に掲げてはいない。つまり党の全権委任を受けて小池氏と交渉をしたわけではないのだ。ただ事後的に両院議員総会で了承されたことによって正当化されたことになるのだが(代表戦は国会議員票だけではなく地方票も一定数あるので、本当はそちらの意見も聞かなければならない)、その後大変な事態になっていることは報道の通りである。希望側の説明が足りなかったのか、あるいは前原氏の早とちりなのか、いずれにせよ、希望は民進党全員の公認など「さらさらない」、自分たちの政策に合致するかどうか選別すると言い、現に選別作業が進んでいるというのだ。

となれば、民進党の両院議員総会での了承は「錯誤」に基づくものであり、無効というべきなのだ。その手続き全体を知りたいものだが、そもそも民進党は参院は残っているし、地方議員は全国にいて、組織の隅々まで支部がある(なにせ野党第一党の老舗である!)。それらの扱いはどうなるのか。民進党が解党にはなっていない以上、代表は未だ名目前原氏であろう。政党助成金は解党になれば国庫返納だが(であるので解党はしなかったと思われる)、どう使うことになるのか。

詰めの甘過ぎる前原氏については、その責任をどれほど追及しても足りないが(何年か前の永田メールを思い出した)、とりあえず今民進党の候補者にできることは、希望の党に公認して貰えればそれでよし、希望に公認拒否されるリベラルメンバーは新党を設立するとのこと、それでやっていってほしいと思う。党の崩壊は誰も予想せず、候補者自身の責任ではないのだから、公示日が10日に迫ったこの時期に未だポスターも刷れない、街頭の幟も立てられないというのでは、なんとも気の毒としかいいようがない。

希望の党は、改憲OK、安保法制OKである。つまり、自民党と何ら変わらない。消費税凍結と原発ノーが変わるが(他にもあるのだろうが)、後者は小泉元総理の支援を得るためにとってつけた感が強い。つまるところ、二大政党といっても何の相違もなく、自民党の対抗軸にはなりえない。民進党は長く安保法制断固反対で戦っていたのに、希望に入るためにそれをいとも簡単に捨てるのだろうか。政治の軸には革新系が必要である。

肝心の小池氏は衆院戦に出るのか否か(都知事を辞めるのか否か)。都議選の時とは違い、衆院選の党代表は首班指名者、すなわち首相候補である。議員でない名目党首では国会での党首討論も出来ない。だが、おそらくは出ないのではないか。民進党が割れる今の状況では、過半数を上回る公認は難しいし、結果として当選者の過半数は無理だろうからだ。となると、国政に出ても鶴首する首相にはなれず、国会に戻る理由が見いだせない。もちろん首相になれる確率は数字的にはゼロではない。希望が過半数に達しなくても維新と組むなどして超えればよいが、ただ現実問題として、参院は自公で過半数を占めており(いわゆるねじれ)、国会運営が出来ず、短命の内閣に終わるであろう。

ここは筋として、小池氏にはきちんと都知事の任期を全うしてほしい。何度も金銭スキャンダルで都知事が変わった後、都民の多大の期待を担って知事に就任して、まだ1年少し。豊洲・築地も問題にした挙げ句結局膨大な費用の積み上げを残している今の状況では、無責任のそしりを免れない。反対に知事としての実績を残せば、バブルではない正当な評価もついてきて、小池氏を首相にという声も出てくるだろう。どこの世界でもそうだが、ことに政治に「言うだけ番長」は不要である。あるいは、リベラル(と共産党)を切ろうとして、いわば確信犯的にこういうやり方で、党を解体させたのかもしれないと思えてもくるのだが…。

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