試験採点とライブドア事件

 あっという間に2月である。
  先週、私は、大学の後期試験の監督とその採点に追われていた。刑法総論400枚、刑事訴訟法200枚・・・公立大学に勤める友人いわく、「私学は恐ろしいね」。実際、3科目とも論述式問題を出しているので、試験問題を作るのは簡単だが、採点は骨が折れる。
  もちろん、〇×や穴埋め式にすれば、人に採点してもらえるのだが、そうした問題を作るのは大変だし、それ以上に私としては、学生にはちゃんとした文章を書かせたいのだ。その際、論述式の試験が出されることがいいきっかけになればと思っているのである。
  もちろんそれだって、人に代わって採点してもらうことは可能だろうが、私はあえて自ら採点している。じゃないとクレームが来たときに、採点基準を明らかにすることができないし、加えて、学生たちの力を知ることが次のより良い講義につながるからである。
  国語力が落ちているとはずいぶん前から言われ続けているが、改めて、字を知らないと分かる。校務員、講成用件(前期から数えて全28回、必ず「構成要件」と板書している)、復雑、強唆、強迫罪……。共同共謀正犯(正しくは「共謀共同正犯」)などはちっとも驚かないレベルだし、はんざい、けいさつかん、もある。文章が書けない。まして段落分けなど、不可能に近い……。と思えば、少数ながらよく書けている答案もあって、嬉しくなる。実際に自分の頭で考えて書いているということは、伝わるのである。
  御縁があって教えることになった学生たちなので、以後も年2回、その度に苦労はするだろうが、体力の許す限りはこの方法でやっていきたいと思う。

  先月1月16日、ライブドアが捜索され、23日、社長他が逮捕された。
  残念ながら私の証券取引法の知識は通り一遍のものでしかないのだが、額面を廃止した結果株式分割がいとも容易になったことなど、最近の商法改正などを最大限に利用した犯行であるのはたしかである。本来、株式発行数×株価≒会社の資産であるはずだが、同社に実業はなく、資産らしい資産は見られない。会社を作ってM&Aを繰り返し、時価を膨らませている実態を知りながら、マスコミ(彼を候補に出した人たちも)はどれだけ持ち上げたことだろう。背景に、拝金主義やモラル低下がある。
  それを如実に露呈した耐震強度偽装事件のほうは警察が年末に捜索をしたものの未だ被疑者の逮捕には至っていない(残念ながら、詐欺での立件は極めて難しいと私は思っている)。それ故よけいに東京地検特捜部の「快挙」は目立つだろうが、国民主権の下、社会を正すのは国民であり、国民が選挙で選ぶ国会議員である。
  常々危惧していることだが、国の一機関にすぎない東京地検特捜部に社会の浄化を期待しすぎるのは誤りだし、まして国民の意見を大きく左右するマスコミがこれにすべて右に倣え、独自の見解を持たないようでは、国民主権もうまく機能しようがない。

  ホリエモンが当選していなくてよかった、であれば今頃小泉内閣は崩壊していたであろう・・・自民党国会議員らが漏らした感想に私も同感である。

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