琴奨菊優勝!に思うこと

はらはらどきどきの数日が、無事に終わった。大関琴奨菊初優勝、日本出身力士10年ぶりの優勝だ。14勝1敗の立派な成績、そしてどの取組みも完勝だった。本当におめでとうございます!

あれっもしかして、と10年前の手帳を見たら案の定、初場所千秋楽の日、私は両国国技館にいた。「正面枡席、栃東優勝」とあるが、しかし覚えていない。以後日本人力士が優勝しなくなるなど思いもしなかったし、この頃はまだ付き合い程度で行っていたにすぎなかった。以後、だんだん興味を持つにつれ、決まり手や取り口など、分からないことはネットで調べたり人に聞いたり…今や、幕内力士の顔を見たら四股名が分かるし、番付も所属部屋も出身地(国)も年齢も学歴も、大体は分かる。幕内どころか今や、十両はむろんのこと、幕下以下の力士でも注目したり、取組内容や結果に関心を持つようになっている。

相撲の面白さは、勝負が必ず、短時間に決まることである。そして、無差別級であることだ。まさに「小よく大を制す」。琴奨菊も179センチの小柄ながら、がぶり寄りの得意技を磨ききって、190センチ級の白鵬・鶴竜・日馬富士の3横綱に、今場所いずれも完勝した。白鵬に以前は歯が立たなかったが、稀勢の里には勝ち越している(稀勢の里が優勝に遠い理由の一つに、琴奨菊に弱いことがある)。無差別級の格闘技を支えるのは多彩な技である。みなそれぞれが自らの技を磨き、力をつけ、相手を研究して、立ち合いに臨む。

今場所、白鵬の一強時代終焉を如実に感じた。先々場所休場し(鶴竜優勝)、先場所の後半3連敗し(日馬富士優勝)、そして今場所も後半の3敗は完敗だった(勝った取組みも内容がよいとは決して言えない)。全盛期の日馬富士は立ち合いのスピードから相手を圧倒したが、怪我と年齢からもはやピークを過ぎている。今場所琴奨菊が奮起して結果を残したことで、どうか稀勢の里も覚醒してほしい。栃煌山も豪栄道も、である。相撲が好きで一生の道と選び、血のにじむような稽古を積んできたのだから、自分へのご褒美として、優勝を、そして横綱を目指してほしい。

琴奨菊は福岡出身。子供の頃から相撲が大好きで相撲取りになりたいと言い、中学から高知の明徳義塾に入ったという。高校を出て角界に入り、大関にまで昇進したが、怪我も多くカド番も多く、最高は12勝である(2回)。二桁勝利にもなかなか手が届かず、一方、同期の稀勢の里(中卒なので年齢は3つ下)は13勝が何回かあり、二桁勝利の常連だったので、評価・人気共に先行されていた。腐ったことも多かったと思う。だが、見事に乗り超えた。昨年7月に入籍した妻には「優勝する」と誓ったそうだ。

小さい時からの夢をひたすら追いかけ、努力し、そして実現する。めったにある人生ではない。ほとんどの人には出来ないことだ。13日目豊ノ島(中学から同期のライバルだという)に負けて白鵬に1敗で並んだ時、やはり結果は白鵬優勝かなと思った人も(私も含めて)多かったと思うが、昨日14日目、栃煌山戦の立ち合い前の顔が落ち着いてとてもいい表情をしていたので、これはいけると思った。今日豪栄道戦でも同じ表情だった。彼は己自身に勝っていたのである。

来場所優勝すれば、横綱昇進となるだろう。そこに、稀勢の里らが立ちはだかる、そういう大相撲を見てみたいと思う。

カテゴリー: 最近思うこと パーマリンク