富田選手の冤罪主張に思うこと

過日韓国で行われたアジア大会で、カメラの窃盗容疑をかけられた富田選手。素直に容疑を認めて帰国後、弁護士と共に記者会見に臨み、冤罪だと訴えている‥。

これが恐ろしく「不合理な」弁解なのだ。捜査の現場に長くいて様々な弁解を聞いてきた私がのけぞってしまいそうなくらいに。いわく「バッグを持っていた手首を誰かが掴み、重い物を入れた。こわいのでその人の顔は見ず、中も確かめず、ゴミだと思ってホテルまで持って帰った」、「ホテルで初めて見たら、レンズを外したカメラだったのでそのまま置いていた。警察の調べに対しては、否認したら帰国できなくなると思い、認めた」‥。

これを「不合理な弁解」と言わずして、何と言おう。突然誰かに変なことをされて、その人の顔を見ない人なんていない。詰問しない人もいない。入れられた物をその場で確かめない人もいない。入れられた物は爆発物かもしれないし、あるいは薬物かもしれないのだ。前者なら危険だし、後者だと所持で逮捕されるかもしれない。言い訳なんか通らないし、薬物事犯はとにかく重い。しかも手続きもよく分からない外国なのだ(想像するだけで、おお、こわい!)。ゴミだと思ってそのまま持って帰ったというのは、もし値打ちのある物だと思って持って帰ったら、窃盗の未必の故意が認められてしまうので、無価値物にする必要があるというわけだ(この理屈は刑法を少しかじれば分かる)。しかしゴミだと思って持ち帰る人がいるだろうか。ゴミならすぐに捨てるし、自分のバッグに後生大事に入れて持ち歩く必要などさらさらありえない。

端的に、彼はカメラを盗んだのである。もちろんお金がなかったわけではないだろうが、窃盗をする人はお金がないからではなく、盗むことが快楽だから(あるいはただ手癖が悪いから、ついつい)盗むことが圧倒的に多いのである。実際に盗んだからこそ、素直に認めた。盗む映像も明らかになっているといい、日本側スタッフもこれを確認したとのことである。ところが帰国後、何らかの理由から、彼は冤罪を主張することに決めたのであろう。この不合理な弁解の発案者は、一体誰なのであろう。

今回奇異に思わされるのは、弁護士がついていることである。弁護士というのは、ただ依頼者がそう言うからとか、あるいはなんとか冤罪を晴らしてほしいというから無理に事実をねじ曲げてでも、というような安易な職責ではないはずである。こんな不合理極まりない弁解を、法律も運用も知らない本人がするのならばいざ知らず、弁護士がするようでは、弁護士に対する社会の信用が揺らいでしまう。もっとももうすでに揺らいでいるよと言われれば、はいそうですね、という以外にないのであるけれど。

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