婚外子相続差別違憲の最高裁決定について思うこと

今月4日、最高裁で久々の違憲判決が出た。婚外子の相続分を嫡出子の半分とする民法の規定(900条4号但書き前段)は「法の下の平等」を定める憲法14条に違反すると判断したのだ。以後実務はこれに従って動くことになり、できるだけ早急に立法府が同条項を削除することが期待される。同決定は違憲判決の効力が遡及しないことにも言及しているので、すでに解決済みの遺産分割には影響を及ぼさないと思われる(でないと、不当利得返還請求などを起こす人もいて、大変なことになる)。

動きを遡ると、法務省は1979年、婚外子の相続分を平等とする民法改正案(いわゆる夫婦別姓も入っている)を公表している。だが立法府が時期尚早として見送り、最高裁も1995年、同規定を合憲と判断した(ただし全員一致ではなく、賛成の裁判官10人に対して反対の裁判官が5人いた)。以後下級審では合憲・違憲双方の判断が混在する中、今回ようやく統一見解が示されたのである。

この間何が変わったといえば、社会の価値観が変わったのであろう。今回の違憲判決は結婚制度そのものを否定したのではもちろんなく、戸籍上の妻でない内縁の妻に相続権がないのはこれまでと変わらない。ただ産まれた子供には罪がないので、相続分を差別するのは違憲だと考えたのだ。ついでに、夫婦(選択的)別姓も認めてくれたらよいと思うのだが、その点は下級審の判断しかまだなく、立法府の合理的裁量の範囲だとしている。

日本では非嫡出子は2%と極めて率が低い。これに対してフランスでは47.4%、スウェーデン55.4%、英国42.3%、米国35.8%…これは2005年のデータであり、フランスでは今や半数を超えるという。それは何を意味するかというと、非嫡出子差別(デメリット)がほとんどないということであり、反対に正式に結婚をするメリットも少ないということである。とくにカトリックの国では離婚が大変な手続きを要するため、多くの人々が欲する結婚の形は、離婚が簡単、かつ相続と社会福祉の権利は保障されるという形態である。その種の事実婚が今や法律婚よりむしろ主流と聞くようになって、久しい。そもそも同性婚すら認める国も増え(カトリック国フランスですら侃々諤々の論議の後、近時認めた)、そういう国から見たら、未だに嫡出や非嫡出とか言っている日本はなんと遅れた国だということになるのだろう。

話は変わるが、最近テレビで映画『インドシナ』を見て、御年49歳のカトリーヌ・ドヌーブの美しさに感動した。調べてみると、彼女はわずか20歳で世紀のプレイボーイ、ロジェ・バディム監督(ブリジッド・バルドー→ドヌーブ→ジェーン・フォンダと、華麗の極みである)の間に息子を設け、その後別の人と結婚したが離婚、後に共演したマルチェロ・マストロヤンニとの間に娘を設けている(キーラ・マストロヤンニは活躍中の女優であり、2子がある)。ドヌーブに続くフランスの国際派女優イザベル・アジャーニも2子あり、ソフィー・マルソーも2子あり、いずれも正式の婚姻による子供とは限らない。ちなみにソフィア・ローレンも2子、エリザベス・テーラーに至っては3子(と養子)もいて40代で祖母になっている。

片や日本の大女優たちを思い浮かべると、原節子は「永遠の処女」、高峰秀子も京マチ子も吉永小百合も子供はいない。山本富士子や司葉子には各1人いるが、30歳を過ぎてすでにキャリアが確立してからの選択だ。ここではたまたま履歴が明らかな大女優を比べたが、一般の女性たちを見ても事情は大して変わらず、日本が子供を産みにくい、育てにくい社会であることは事実であろうと思うのだ。生きている証として恋をする、その当然の結果として子供を産むことがキャリアを阻害しない、どころか自らの世界を広げ人生を豊かにするという、プラス思考が当たり前の社会でなければ、少子化は決して解決しないであろうと思うのである。

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