尖閣問題に思うこと

 尖閣諸島の国有化に抗議して、中国各地で民衆の暴動が激化し、今現在も収まる気配を見せない。国は20億円という法外な価格で、ずいぶんいわくつきの地主から島の所有権を買い上げた。経緯としては、まずは都で買い上げる旨知事が外国で宣言し、多額の寄付(計14億円)も募ったことから、国も引くに引けなくなってのことと思われるが、いうまでもなく、土地の所有権の帰属と領土権の問題は別個である。たとえ中国人ないしは中国国家が尖閣諸島を買ったとして、それが中国の領土にならないのと同じことだ。もし中国が尖閣を購入し、だから中国の領土だと宣言したら、日本だって怒るだろう。

 果たして、尖閣諸島は日本の領土なのか。日本はそうだとの見解を取るが、もとより中国は異なる見解を取っている。互いに俺が正しいと言い合っていても始まらないので、国際機関に提訴したほうがよいのではないかとも思う(もっとも竹島と同様、中国が応じなければ提訴はできないのだが)。さらに言うなら、真に尖閣が日本の領土であるというならば、2年前、領海侵犯の中国漁船を海上保安庁が拿捕し、公務執行妨害罪で船長を拘束した例の事件の際、法治国家としては粛々と法に従って船長を起訴し、裁判にかけるしかなかった。それを(今思い出してもぞっとするのだが)那覇地検が「日中関係を考慮して」釈放するというまったくもって筋の通らないことをしたことが、そもそも事を大きくした発端ではなかろうか。民主党政権の失策は数えれば切りがないが、最大の失策はこれに尽きると私などは思っている。

 筋の通らないことにはやはりしっぺ返しが必ずやある。政府は事態をどう収束させ、領土問題をどう解決していくのか。対する自民党も一体どうするつもりだろうか。総裁選に浮かれている場合ではない。5候補の誰もが世襲のこの総裁選、なんだかみな坊ちゃんで頼りなく、危機にある日本の舵とりを任せられるのか、著しく不安だ。右翼・左翼、保守・革新の色分けではなく、大局的見地に立って、国際社会における日本の立場をリードできる人。中国とは尖閣諸島、韓国とは竹島、ロシアとは北方4島…国家の根元にかかる領土問題を、日本はいくつも抱えている。きっちり対処できる政府が現れないものか。

 力を合わせないといけない東アジア諸国はばらばらで紛争がつきない。片やヨーロッパ大陸はEUとしてまとまり、ギリシアの経済危機その他諸般の問題を抱えているといっても、歴史問題・領土問題でもめているとはついぞ聞かない。

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