執筆「迷惑をかけない,不愉快にさせない。 最低限のマナーは守ってほしい。」

 近頃、あんなに驚いたことはない。マナー違反もここに極まれり。みなが静かに聞き入っているクラシック音楽の演奏中、会場の前方から退出する者が続いたのである。
 まずは小学1年位の男児だった。子どもだから急にトイレか、仕方ないかと気を取り直したところに、その子は戻ってき、堂々と席に着いた。ところがすぐにまた席を立ち、出て行ったのである。今度は荷物を持参している。
 一体、親は何をしているのか。と苛立つところに、今度は年配の男性が退出したのだ。荷物を持参し、普通の足取りである。平行して、私の隣席の男の携帯が、マナーモードでブーブー鳴り続ける。続いて、後部座席で派手な着信メロディーがけたたましく鳴った。
 この一連の騒ぎにもピアニストは平然と演奏を続け終わり、ブラボーの嵐に包まれた。だが万一、拙い演奏だったとしても、中座せず、静かにすべきは当然のことである。人に迷惑をかけない、不愉快にさせないのは、人間社会で最低限必要なマナーなのだ。
 これは極端な例かもしれないが、近頃、マナー違反がやたらに目に付く。歩きながら、あるいは電車やバスの中で、パンを食べる人をどれだけ見ただろうか。人前の化粧も今や当たり前。カップルのいちゃいちゃも目に余る。彼らの意識には他人が存在しないのであろう。
 マナーを作るのは、当然ながら躾である。躾は「身を美しくする」もの。日本が作った独自の漢字である。私が5年来住む賃貸マンションでは、見知らぬ住人からよく、「おはようございます」「こんにちわ」とにこやかに声をかけられる。その度にちょっと驚いて、私は挨拶を返す。躾の出来た人も多いなと思う。見習わなくてはとその度に思うのである。

自由民主党月刊女性誌
『りぶる』

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