世界の重大ニュースあれこれ

イギリスのジョンソン首相は、ブレグジッドを10月末日無条件に強行する策として、今月10日、イギリス議会を1ヶ月にわたって閉会した。仮にも三権分立下でそんな無謀が許されるのかと驚いていたら(民衆の反対デモが凄かった)、野党議員らから訴えが提起された結果、最高裁で24日、違法との判断が下された。イングランド&ウェールズ高裁は、統治行為なので裁判所の判断に適さないと却下したが(スコットランド高裁は違法とした)、最高裁は11人全員の裁判官が違法としたのである。

日本ではこんな事態は当然ながら、ありえない。議会は独立しており(国会議員は国民の代表であり、国会は国政の最高機関である。憲法41条)、議院内閣制の下で組成された内閣からの干渉など、一切許されない。なぜこんな馬鹿馬鹿しいことが起こるのかとつらつら考えるに、イギリスは成文法の国ではなく、成文の憲法すらなく、慣習や判例といったもので動いてきたからではないか。つまり、判断は「良識」による。実際のところ、良識さえきちんと作用する限り、法律など、もとより不要なものである。しかし、ブレグジット国民投票以降の、あまりに見苦しく、恥ずかしくさえなってくるこの国を見ていると、良識などもはやなく(もちろん一部の人にはあるのだろうが)、まとめるリーダーも不在との感を強くする。もともとイギリスなる国は一つではなく、イングランド&ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの統合国であり、それぞれ沿革も異なり、民族も言葉も違い、法律や政府機関も異なっている。

EUを離脱すれば、通関手続に手間取るし関税もかかるし、シティから各国金融機関が抜け出し、工場も移転し、経済ががたがたになるのは目に見えていることである。加えて、北アイルランドとアイルランドの国境問題がどうなるのか。スコットランドの独立問題はどうするのか。顧みて事は、国家存亡の根幹に関わる大問題を、気軽に国民投票にかけたキャメロン首相の軽薄さに始まる(彼は国民が残留に賛成だと信じ、ただこれを自分への信任票にしたかったのである)。ロンドン市長を経たジョンソン氏は、40代で首相に就任したキャメロン氏をライバル視し、政治家である家族が残留支持でありながら(自身も同じだったはずなのだ)、離脱を掲げて国を二分する大運動を繰り広げた。結果、離脱賛成が50%を僅かに越えたが、国民投票の結果に法的効力はなかったから、速やかにやり直せばよかった。そうしておれば、次は冷静に、残留派が多数を占めたはずだ。その機をなぜか、誰もが、逃してしまった。その結果の相次ぐ迷走劇に、収束の気配はおよそ見えない。

韓国も世界のニュースになっている。日本とは比較するべくもない超学歴社会・韓国で、ソウル大法学部卒でソウル大学教授という、韓国きってのエリート曹国(チョ・ググ)氏が、タマネギのように剥いても剥いても出てくる疑惑の渦中で、法務大臣に任命された。韓国で最も憎悪の対象になることは、学歴ねつ造(チョの娘・息子)及び兵役逃れ(チョの息子)である。娘は高校時代に研究所でインターンを2週間務めただけで論文の筆頭筆者になり、筆記試験なしで高麗大学(私立の名門)に入ったという。そのうえ釜山大学大学院(医学)進学の際も、東洋大教授を務めるチョの妻(ソウル大学卒)が娘が東洋大学総長賞を受けた旨虚偽の表彰状を作成していたことが発覚し、事情聴取をされないまま私文書偽造罪で在宅で起訴された(検察いわく、当該総長が表彰状を出した事実を否定し、7年の時効が完成する間際だったのでとのことだ)。チョ自身、総長に口裏合わせを依頼したという。

エリートたるものは確たる倫理観を持つべきである。単に法を侵さない、法を守るといった最低限のレベルではなく、人間としての高い道徳を身につけ、尊敬を受ける人でなければならない。人としての道を踏み外して恥じない者を法務大臣に任命し、また本人もこれを平気で受けるなど、どうかしている。チョはこの度、自らの様々な容疑によって自宅(アパート)の捜索も受けた際、検事に電話して「妻の体調に考慮してほしい」と言ったとかで(当の検事いわく「捜索を早く終えて」と言われたとか)、国会で追及され、反省していると述べたそうだ。もちろん、法務大臣が個別特定の捜査に口を出すことは許されないことである(野党からすでに職権濫用で告発されているという)。文大統領にしてみれば、韓国の大統領は一期5年で再選はなく、退任後は必ずといっていいほど検察に逮捕されて獄中生活が待つだけに、子飼いを跡継ぎにしようとの腹だったのだろうが、チョでは無理である。チョが疑惑を逃れられない限り、任命責任を問われ、一蓮托生になるのが落ちであろう。

かつて、韓国の検事たちから羨ましがられたものである。日本の検察は政治から独立していていい、自分たちは政権の指示で動いているからと。前大統領は、なんらかの罪を着せられ、そして獄中に繋がれる(死刑は事実上廃止されている)。しかし、チョや文が掲げたのは検察改革であり、強すぎる検察の弱体化であった。現行の韓国検察は日本の戦前と同様、検察があらゆる事件の捜査権を独占している。それを、検察が直接捜査できる権限を汚職や経済事犯、選挙犯罪などに限定し、その他の刑事事件は警察に一次捜査権を与えようというものである(そうすると、日本の現行制度とほぼ同じになる)。そうはさせまいと抵抗する検察が政府とガチンコ勝負をしている‥?! であれば、かつて私が嘆息されたのとは全く違う展開である。昨日買った週刊文春によると、チョには年齢詐称疑惑(2つサバを読み、ソウル大学に最年少16才で合格したことになっている)もあるというが、そんなことがありえるだろうか。

トランプ大統領がウクライナ大統領に電話をし、バイデン民主党前副大統領(次期民主党大統領候補)親子の捜査(息子はウクライナの会社役員)を依頼したとの重大疑惑があるので弾劾調査を進める旨、ペロシ下院議長が発表した(下院は民主党が過半数を占める)。今後の進展次第では上院での大統領弾劾に至るかもしれない(上院は共和党が過半数を占め、大統領弾劾は3分の2以上の賛成を要するのでなかなか難しいが)。数々の疑惑を乗り越えてきたトランプ氏だが、再選を目前にして民主党も本腰を入れてきたため、まさかの失脚もありえるかもしれないと思えてきた。

韓国もアメリカも、最後に事を決するのは民意である(イギリスの問題は民意ではどうにもならないように思えるが)。カナダでは、圧倒的な支持率を誇っていたトルドー首相がこの2月、地元ケベック州の大手企業の贈賄事件を巡り、刑事訴追を控えるよう司法当局に圧力をかけたとの疑いが浮上し、連邦倫理委員会が8月、司法当局への同氏の圧力があったと結論付けたことにより、支持率が激減し、来月の総選挙は予断を許さないという。民主主義ではそれぞれの考え方、方向性には様々なものがあれど、「法の支配」は譲れないところであり、倫理的基盤はやはり国の重要な要であると思わずにはいられない。

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