逸ノ城の大躍進に思うこと

新入幕逸ノ城の大活躍が止まらない。前頭10枚目なのに、勢に負けただけ(勢に鼻血が出て取組が途中でいったん止められた)。俄然優勝争いに絡んできたので、割を崩して11日目には大関戦が組まれた。稀勢の里完敗、昨日12日目には新大関豪栄道も完敗。今日はついに横綱戦である。3月場所で初優勝し、横綱3場所目の鶴竜だ。

鶴竜は横綱相撲が取れない。そもそも自分の型がない。引きやはたき、立ち合いの変化などその場の対応力で勝ちを重ね、ついには横綱になった。3場所目の今場所こそは初優勝したいところだが、昨日は琴奨菊に負けてすでに2敗である。全勝白鵬はもちろん、1敗の逸ノ城にも遅れを取っている。今場所の両者の取組を見る限り、鶴竜が勝てる形が思い当たらない。普通にいけば逸ノ城が勝つであろう。でなければ限りなく、談合を疑ってしまう。それくらい逸ノ城の強さは圧倒的だ。まさに怪物である。

21才逸ノ城は体格に恵まれ、身体能力が著しく高い。組むも良し、押し・突きも良し。下半身が異様に強く、引きにも叩きにも、まして投げにも屈しない。また恐ろしく冷静で、決して慌てない。かねて逸材ぶりは聞こえていた。しかしここまでとは思わなかった。192センチ(白鵬と同じ)で体重は199キロ(白鵬より40キロ重い)、でありながら動きの鈍さ、下半身の頼りなさは微塵もない。そこがハワイ勢やヨーロッパ勢とは違う。

彼は初の遊牧民出身である。厳寒のゲルに住み、毎日の厳しい肉体労働に従事し、馬に乗り、狼の襲撃に備えていた。私たちにはとうてい想像すら出来ない厳しい生活である。そこで筋肉はもちろん精神力も養われた。もともとがまるで違うのだから、たとえどれほど精進をしても日本人力士は敵わないであろう。それは都会ウランバートルで育った他のモンゴル力士らも似たり寄ったりかもしれない。

まさに歴史を塗り替えるスーパースターの登場である。稀勢の里の初優勝・綱取り、そしてまた遠藤の登場で沸いていたことがずいぶん以前のことだったようにすら感じられる。一番悔しいのは当の本人らに違いない。一生懸命稽古をし毎日相撲道に精進してきたのが、今年デビューしたばかりの新人にしてやられてしまうのだから。

逸ノ城は先場所十両で、26才栃ノ心に2回続けて敗れた(本割りと優勝決定戦)。そのためさほど前評判は高くなかったと思われる。しかし今場所の逸ノ城の大躍進で、栃ノ心が俄に脚光を浴びている。グルジア出身で最高位小結まで上ったが、大けがをして休場、幕下からまた這い上がってきた。先場所の十両で優勝し、今場所の十両ではひとり全勝中だ。来場所はもちろん再入幕してくる。彼もまた192センチの体格に恵まれ、著しく高い身体能力を有している。おそらく精神力ともに以前よりさらに強くなっているのであろう。

相撲は国技だが、もう国技とは言えないのかも知れない。柔道がJUDOになって別のものになってしまったように。とでも思わないと相撲ファンはストレスが溜まってしようがない。豊かな環境で育つ力士に、ハングリーに育った力士と同じものを求めても無理というものだ。外国人力士に門戸を開いたその時から、今回の事態はおそらくは読めていたのであろう。

カテゴリー: 最近思うこと   パーマリンク

コメントは受け付けていません。