大相撲終わる、猪瀬問題について

昨日は今年最後の千秋楽。1敗同士の横綱対決はまさに一年の締めくくりに相応しい取組み、のはずだったがなんともあっけなかった。九州場所の主役はなんといっても稀勢の里だ。13日の日馬富士戦、続く14日白鵬戦ともに完勝。とくに後者は力で競り勝っただけに、感動した。盤石の名横綱白鵬に、今四つに組んで勝てる力士は稀勢の里しかいないと思う(日馬富士も勝てるが、軽量級だけに内容が違う)。幾多の試練を乗り越え、雑音にめげず、自らの相撲道に邁進した努力が実を結んだのであろう。来年の優勝を、自ら勝ち取る成果を、一ファンとして心から望んでいる。

さて、そういう爽やかなニュースの一方、猪瀬の顔が頻繁に流れて、鬱陶しくて仕方がない。この人の品性・教養の低さについては以前にも指摘した。東京オリンピックを誘致してくれたと評価する向きもあるようだが、まさかこの人の貢献によって誘致できたと信じているわけではあるまい。もともとは作家が副知事に登用された。ところが石原さんが急に辞めることになって、後継者指名がかかった。当然ながらほぼ勝利は確実、実際に400万もの大量得票をして当選した。それが昨年の12月だ。

ところが、今回の徳洲会事件捜査の流れにおいて、彼がその前月、議員の父である元理事長徳田虎雄氏に自ら会い、その指示によって議員から議員室で現金5000万円を受け取った事実が判明した。なぜ密室での現金のやりとりがばれたかというと(普通、こういうのは双方に益がありばれれば双方が困るため発覚しにくいのである。「被害者なき犯罪」と言われる所以である)、本年9月17日に特捜部による徳洲会グループの捜査が始まってやばいと感じ、同月下旬5000万円を返却、それがそのまま前理事長の妻管理の金庫に保管されて11月の捜索時に見つかり、同妻が白状したことによる。これが猪瀬事件の「捜査の端緒」だが、猪瀬としては青天の霹靂であっただろう。まさに天網恢々‥ではないか。

本人の弁解は見苦しくも二転三転する(これまでの偉そうな態度は、一体どこにいったのだろう!?)。選挙資金として借りたと言っていたのが、すぐに「個人としての借金」に変わる。誰かに知恵をつけたられたのであろう。選挙資金であれば会計帳簿に記載をしなければならないし(違反は3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金。ただし主体は出納責任者)、しかも選挙費用には当然ながら法定額があり、それを超えての支出にも同じ刑事罰がくる。いずれにしても表に出せない金を借りた(あるいは貰った?)ことは明らかである。

個人の借金ということであれば、たしかにこの規制は免れる。しかし個人が何の使途目的でその大金が必要なのであろう。しかも1億円(あるいは1億5000万円)を猪瀬側から要求したとの報道もある。そんな大金を何に使うというのか。時期として選挙しか考えられないであろう。あるいは「落選したら生活が大変になる」とか「残ったら返す」と言ったとの報道もあり、であれば最初から返す気などはなく貰う気だったのではとの疑いが濃厚になる。借用証もなければ、返却されたときの領収証もない。それはつまり裏金であり、かつ借用ではなかったからである。貰うのであれば贈与税を払わなければならないから、脱税もまた明白だ。

徳洲会は全国に病院を展開している。都知事は巨大な許認可権を持つ。知事にほぼ確実になるであろう人間に、金を渡しておいて損なはずはない。というか、要求されて払わないとどれほど不利益を被るか知れたものではない。残念ながら贈収賄の要件は厳しいので収賄にはなかなか引っかからないが、実体としては収賄に近いお金だと私は見る。贈収賄では、金を渡す贈賄側は自らの商売に絡んでいるので、弱みにつけこんで要求して受け取った人間のほうがずっと悪い。公職に就く者は清廉潔白でなければならないのだ。彼は政治家として失格、という以前に人間として失格である。金に汚い人間にろくなのはいない(と前に書いた)。

カテゴリー: 最近思うこと パーマリンク