弁護士が食べていけない!

 先般,とある会合で知っている弁護士に声をかけられた。「仕事ありますか?」 弁護士経験約15年の中堅である。 

 この質問の背景として,弁護士の仕事は減っているのである。警察は大きな声で言わないけれど,犯罪数が減少していては刑事事件が減少するのは当然である。民事事件もサラ金への過払い金請求がなくなったせいで,ずいぶんと減った。需要が減る一方,供給となる弁護士数はどんどん増えて今や3万人。つまり,単純に計算して一人頭の仕事は減っている。となれば競争が熾烈になって単価が下がる(まるで建設業みたいだ!)。法律相談センター案件や国選弁護案件など,単価が安い案件も今や取り合いの状況だという。弁護士が少ない時には譲り合いをしていたのが嘘のようだ。

 ところがその弁護士の話はもっと深刻だったのである。「顧問先が1件もない。仕事もない」。事務所の賃料は貯金を下して賄っているという。こんなのなら事務所を畳んでどこかに雇ってもらって月20万円(!)でも貰っていたほうがいいさえ言うのである。よほど困って私にも声をかけてきたのだろうが,どうしてあげることもできない。私にしても仕事が余っていて人の手も借りたいという状況ではない。

 ふと考えたのだが,飲食店など普通の店であれば,歩いていて誰かぷらっと入ってくる(だから地下や2階以上は立地が良くない)。だが,弁護士事務所にふらっと入ってくる人は,いないのだ。もし何か困りごとが起これば友人知人の伝を頼るだろうし,それもなければ法律相談センターに行く。いずれにしても案件は単発で,次に続く話でもない。食料品や生活雑貨とは違い,また医者や税理士とも違い,弁護士は通常は必要のない存在だからである。しかし,事務所を構えている以上,賃料や人件費その他の固定経費は一定額必ず出ていくから(弁護士会費だけでも年50万円する。強制加入団体),事務所を運営するうえでのベストは,顧問料という固定収入で固定経費を賄えるようにすることである。であれば事務所経営に困って,あるいは食うに困って,良からぬ案件に手を染めることもないし,もちろん客からの預かり金に手を出すこともない(これはもちろん業務上横領なのだが,この種事件は結構起こっている)。

 だが,会社なり個人に月々の顧問料を払ってもらうのはそう簡単ではない。払うほうとしてもそれなりのキャリアがあり,信頼関係がなければ払うはずがない。飲食店がめまぐるしく変わるのは新規参入が容易な業界だからだが,これから弁護士もきっと淘汰の時代に入っていくのであろう。衣食住足りて礼節を知る。自らが食べていけなくて他人の窮状を真に憂えることはできない。需要も考えずただ安易に法曹人口を増やした付けがこうやって回ってきたのだと思う。

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