産経ソウル支局長を名誉棄損罪で在宅起訴!

呆れる事態である。産経新聞がネット上で、大統領がセウォル号事故の当日、青瓦台(大統領府)にいなかった(男と会っていた)との噂がある旨の記事を流したことを、名誉棄損にあたるとして捜査し、在宅起訴に踏み切ったのである。

この記事の出所はそもそも朝鮮日報である。そういう「噂がある」という程度のことを朝鮮日報が書き、これに男女関係を加えて流したのが産経新聞ネットだという。韓国の刑法上の名誉棄損は日本と比べて重く、(事実が虚偽でなくても)2年以下の懲役、事実が虚偽であれば5年以下の懲役である(日本はいずれでも3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)。ネット上の名誉棄損についてはその特別法として「情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律(情報通信網法)」があり、「人を誹謗する目的で情報通信網を通じて公然と事実をあらわし他人の名誉を棄損したものは3年以下の懲役・禁錮又は2000万ウオン以下の罰金」とされ、虚偽の事実の場合にはこれが「7年以下の懲役、10年以下の資格停止又は5000万ウオン以下の罰金」とされているという。「人を誹謗する目的」が必要なので、その分ハードルは高く、もとは市民団体からの告発を受けた際にはこの罪名だったが、検察の起訴は刑法によったとの情報もある。

韓国の名誉棄損罪は日本とは異なり、親告罪とはされていないと知った(死者の名誉の場合には別である)。ただ被害者の明示の意思に反することはできないとされているので、個人的法益というよりはどちらかというと社会的法益として扱っているのであろう。言えることは、大統領が明らかに処罰意思をもっているということであり、現に大統領の名誉を毀損したとして民事訴訟を起こされている報道機関は5社には及ぶとの情報もある。

しかし産経新聞を起訴するのなら、その元になったネタ記事はなぜ起訴されないのであろうか。朝鮮日報は保守の読者層であり、大統領の支持層と重なるから避けたのだとの情報もある。問題は、大統領の行動たるや公益性の最たるものであり、明らかに記事内容が虚偽でなければ名誉棄損の対象からは(少なくとも日本では)外れる。でなければ民主主義の根幹である表現の自由、それを支える報道の自由が崩れるからである。

かつて韓国検察の偉い方が、「日本は検察が独立していてよいですね。羨ましい。韓国は大統領の指示で動いているので」とため息をついたことがあった。故に、権力の座を離れると訴追が待っているのである。裁判所が独立していること、そのために検察もまた独立をしていること(行政府なので司法の独立とはもちろんレベルが違うのだが)は必須のことである。今回の暴挙で分かったことの一つに、韓国大統領ないし大統領府が自国のイメージを良いものにしようとの姿勢が欠如していることがあげられるであろう。

名誉棄損

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